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前回のお話し
前回述べたように、東洋医学の言う五臓六腑の一つである、小腸の腑、大腸の腑には、「左旋」「十六曲」という形態的特徴が付されている。
(『霊枢』腸胃(31)です。)
カテゴリ 五臓六腑
もちろん、実際に人体を解剖してみれば、小腸は左旋も16曲もしていない訳ですが、現代西洋医学的な現実的、写実的解剖学ではなく、
気一元論、太極陰陽五行論を前提とした、観念論的、機能的解剖学の”より完璧な”構築に腐心した古代中国、あるいは東アジアの医者たちとしては、
ここにどんな意味を込めたのか。
・・・昔から感じるけど、こういう問題に興味を抱き、気にするかどうかっちゅーのも、感性、センスという意味で、この医学を実践、ないし研究していく者にとっては重要かもしれない。
まず「左旋」からだけど、左旋ときたらまず思い浮かぶのが河図洛書の洛書だ。
河図洛書に関して、詳しい説明はここではしない(てか素人なんで出来ない(-_-;))けど、洛書では陰の動きは四隅における左回旋(2→4→8→6)であらわされる。
(アルテミシア『臓腑経絡学』p13)
つまり小腸の腑、大腸の腑における廻腸の「左回り=左旋」という形態的特徴の意味は、「陰の動き(収斂、収蔵、ある意味で成熟)」を表現しているのではないか、と、個人的には愚考している。
つまり形態的に「左旋」であらわされる「陰の場」である小腸大腸において、飲食物(水穀)は収斂、収蔵されていき、ある意味で「人体にとっては使い物にならない」二便が成熟していくわけだ。
(しかも左旋しながら上から下に動くわけだしね。(^^♪)
因みに、五藏六府の中で、奇恒之腑も含めて、回旋、螺旋のイメージであらわされるのは小腸の腑、大腸の腑のみだ。
(そのうち語りたいけど、この東洋医学的人体の”回旋・螺旋”の問題がまた、色々あって楽しい。(*‘∀‘))
カテゴリ 奇恒之腑 参照
・・・ではもう一つの特徴、「十六曲」はどうか。
五臓六腑では他にも、肝の七葉、肺の八葉、心系の四、三焦の三、脾・胃や心・心包や肝・胆や腎のニコイチなど、数字に拘って特徴づけられたような表現が散見される。
因みに、Wikipediaによると16の正の約数は1、2、4、8、16の5つだそうだ。
そして約数を「5つ」持つ数の中では「最小が16」であり、16の次は81だそうだ。
(もうこの、”最小”とか、”次が81”とか出てきただけで、ヨダレが。。。(笑))
また、約数の和と元の数との積が完全数になる3番目の超完全数であるそうで、1つ前は4、次は64だとか。
(これも、4とか64とか出てくるともう。。(゚∀゚))
数字、数術に詳しい読者の方、16そのものの数学的、数術的意味に関しては、まだまだ色々あると思うんで、ぜひ教えてください。<m(__)m>
・・・ともかく、「16」みたいに、易(河図)の言う生数(せいすう:1~5まで)と成数(じょうすう:6~10まで)を超えた二桁の数字が出てきたときは、
『黄帝内経素問 三部九候論(20)』に「天地之至數.始於一.終於九焉.」とあるように、そこに含まれる生数や成数の組み合わせで意味を考えて妄想したりしますが、
今のところ、小腸大腸の場合の「16」に内包されている意味は4✕4じゃないかな、と思っています。(私見)
「4(四)」は古代中国においては、代表的には地(陰)における東西南北の空間や、四時陰陽(四季)を示し、空間的広がりや、時間の循環を意味します。
(青土社『中国神秘数字』参照)
また、易(河図)の生数では「4」は「金」を意味します。
「五行」のはたらき 4 参照
脾の臓と胃の腑の協調共同作業(胃の受納腐熟、脾の運化昇清のコンビネーション)での結果としての未消化物を、正常な脾胃の働きを土台にしながら、
心腎の陽気の扶助、肝肺の疏泄昇発宣発粛降の扶助によって、滞りなく、完璧に近い形で精濁泌別、糟粕の伝導が行われるためには、空間的に十分な広がり(四方)と、
十分な時間的な有余(四時)を必要とし、最終的には魄門(肛門)からの排泄(死と再生)が待っていますので、この流れは陰の場(左旋)において行われないと。
小腸の腑、大腸の腑における「左旋」「16曲」は、あんな、ある意味で稚拙な蔵象図の中に、上記のような深い意味をサラッと込めているモノなのではないかと、今のところ愚考しています。
(読者の方で、これに関して他の御見解がある方、ぜひご教示ください。)
鍼灸臨床で、便秘や下痢を治療するときに、合谷や後渓や上廉や下廉を当たり前に使うことがありますが、上記のようなことを考えながらやると、
診どころや意識に変化が出てくる筈です。
澤田健による
「リウマチは小腸の熱だ。」
という発言の意味や、北辰会が後渓を使ってあらゆる病を治している現実なんかもね。
・・・ま、どうであれ、結果的に、腸の健常な左旋力、消化吸収に必要不可欠な空間と時間を調整するのではないかと思っています。
今のところ、そう考えています。(゚∀゚)
(因みに今回と前回の話はまったくの私見ですので、悪しからず☆)
2019.10.06
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今書いている「太極・無極」シリーズ。
長くなったので、ここらで目次を作りましょう。
番号だけ並んでても分かりにくいので、各話にタイトル付けます。
「太極」「無極」の意味 6 なぜ”太極”陰陽論なのか その2
・・・もうちょっと続きます☆
2019.09.23
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これまでのお話し
さて、続きいきましょう!!
◆戴震の気一元論。
「太極」「無極」の意味 2に、『道教事典』に書かれてある「太極」の意味の変遷を書いたが、ここに、
18世紀に清代考証学の大成者と言われる戴震(1723-1778)が出て、「存在の根源を気に求める思想」を決定的にした。
とある。
まあ、歴史的には王夫之さんから戴震さんの流れで、朱子さんの「理気二元論」の考えにさらに批判が加わって、
「理よりも気!」
「気こそは動き(自然界の運動)であり、存在の根源!!」
という理解が決定的になっていったようです。
さてこの、戴震さんの「気一元論」というのはどんなもんなんでしょ??
気のことを考える時の決定版的書籍である東京大学出版会『気の思想』には、戴震さんが
「気化流行、生々して息(や)まざる」
という表現を好んで用いたことを挙げ、戴震さんが「理」によって規定を受けない気の自己運動を認め、たえず運動することこそ気の本質的な性格とし、
静止することよりも運動することの方に大きな価値を認め、かつ生命(自然)を大いに尊重する、という思想を表明した、としています。(P475)
つまり、有形(形而下)も無形(形而上)も、一切は気の動きであって、気のその場その時でのありように名前を付けたのが「理」であるとし、
このように定義すると「気」を離れて「理」は存在しえない、ということになり、「理」よりも「気」を優先する立場をとりました。
・・・とあります。
ホントは戴震の論と王夫之の論をもっと精査しなきゃならんけど、この戴震さんの考え方に、北辰会の「気」解釈はかなり近いと言えるんじゃないでしょうか。
因みに、江戸期、京都の儒学者である伊藤仁斎(1627-1705)は戴震よりも約70年も早く、朱子の理気二元論を批判し、この「気一元論」を唱え、
後世に大きな影響を与えています。
後世に大きな影響を与えたということと、先見性という意味でも、伊藤仁斎の功績は非常に大きいと評価すべきでしょう。
伊藤仁斎の後、このブログでも何度も出てきている香川修庵、後藤艮山、並河天民、吉益東洞といった著名な医家が出てきて、いわゆる古方派医学が台頭し、
「一気留滞説」「万病一毒説」などの、日本的といわれる「万病一元論」とでも言うべきもの提唱し、医療界にある種の革命を起こしていきました。
約300年前の日本、江戸期のこの動きの延長線上に、現代でもよく言われるような
「中医学の弁証論治か、日本漢方の方証相対か。」
みたいな問題があることを考えると、ここらあたりの理解は非常に重要なことだと思いますね。
「方証相対」を含む記事 参照
次回、「太極」を図示した「太極図」に注目してみましょう。
続く。
2019.09.22
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これまでのお話し
さて、続きいきましょう!!
◆「気」の哲学の変遷
さてここまで、「太極」「無極」「その両者の関係」「鍼灸臨床家としてはどうか」あたりを題材として話を進めてきました。
「臨床家としてはどうか」というところで、北辰会ではこの医学の言う「陰陽論」を、単に「陰陽論」と呼ぶのではなく「”太極”陰陽論」として、
理解、運用するべきだ、というお話(臨床古典学)もしました。
蓮風先生の御著書では、中国、成都中医薬大学の教授で、易学の大家である鄒学熹先生の『易学十講』の論を参考に、陰陽論というのは「陰」と「陽」と「その境界線」の3つ、
「三を含みて一となす」という考えがあり、全て一つであるという太極と、陰陽と境界の太極があるからだ、と説きます。
(因みにこの辺の詳細(『易学十講』の部分的翻訳)は、北辰会機関誌『ほくと』17号に掲載されています。)
まあこれは、簡単に言えば何かを陰陽に分ける時に、その基準(境界)を明確に!というお話です。
そしてこれには、背景として「気一元論」という考え方があります。
「気一元論」を含む記事 参照
「気一元論」は、簡単に言えば「この世界は全て気で出来ているのさ」という考え方です。
東京大学出版会『気の思想』によれば、「気一元論」という言い方は、特に誰それさんが言い出した言葉、というワケではないようで、古くは『老子』『荘子』『淮南子』の中にもあるっちゃある考え方であり、
この考え方を強調したのは、中国では北宋の張横渠(ちょうおうきょ 張載(ちょうさい)ともいう 1020-1077)、日本では伊藤仁斎(1627-1705)が有名だそうです。
伊藤仁斎という人物 参照
(張横渠もせっかくなんでそのうち紹介しましょう。この人は何とあの程顥と程頤(二程子)の叔父さんです。優秀な一族だねえ~~ (゜レ゜))
荘子の
・・・因みに、現代中国では大きく気の哲学について3つの流れがあると考えているそうで、
1.程伊川と朱子の「性即理」の考え方(客観唯心論、客観的観念論)
2.陸象山と王陽明の「心即理」の考え方(主観唯心論、主観的観念論)
3.張横渠と王夫之の「気」の哲学(唯物論)
とし、3.の唯物論哲学こそ最高のものである、としているそうです。
(by 『朱子学と陽明学』島田虔次)
(因みに、王夫之の気一元論に関してはこの論文が参考になりました。)
しかしこの、3.の、気一元論を、全くの唯物論と解し、それを最高のものとする考え方と、北辰会の考え方は違います。
中国哲学、中国伝統医学に通底する「気」という概念は、唯物論でとらえきれるものではない、と考えています。
北辰会では「気」を唯物論でとらえ、最小精微な物質である、とするのではなく、むしろ生命原理、生命原体ともいうべきものとして、生気論的に理解しています。
つまり「気」を、物理学(ニュートン力学)の言うような質量を持った存在、と考えるのであれば、それとは認識を異にする、ということです。
(といって、量子力学の言うような素粒子とも同じでないと思いますが。)
・・・ま、「気ってなに??」という問いに対しては、トートロジー的になるけど、10年前に書いたように、「気は気です。」という答えがやっぱベストかな、と。
ここまでの話で言えば、生成論の太極も、場の論の太極も、認識論、存在論における主観と客観も、ぜーんぶただ一つの気の動きの一様態ですよ、ってことですね。
次回、清代に「気は動きである」この理論を完成させたと言われる戴震(1723-1778)さんを紹介します。
続く。
2019.06.03
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いやー、今調べてる中国の宇宙論シリーズだが、ここから派生して色々調べていくと、おもしれーけどキリがねーーー。。。(~_~;)
気一元論、古代中国の神話の世界の話、物理学の話、数学の話、天文学の話、宋学の話、上天、上帝信仰の話、諸子百家における宇宙生成論、
宇宙開闢論などなど、調べれば調べるほどキリがない。。。
まあこういう百家争鳴の影響を受けながら、東洋医学というものも研究され、実践されてきたワケですね。
キリがない訳だ。
・・・けどまあ、古代中国の自然哲学は面白いし、意味もあるけど、冷静に考えて、僕らは常に現代日本でなしうる鍼灸の最高のパフォーマンスを追求していかなくてはいけない訳で、
何て言うか、冷静で客観的、現代的な視点が大事だと思いますね。
古典に臨床を合わせるのではなく、臨床を古典に合わせる姿勢ね。
蓮風先生から教わった、「臨床古典学」ってやつ。
西洋医学が、現代日本どころか世界の医療のメインストリームであることも当然踏まえた上で。
これ大事。
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2019.05.26
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これまでのお話し
中国の宇宙論 ① イントロ
中国の宇宙論 ② 蓋天説 参照
◆「宣夜説」って何すか??(゚∀゚)
古代中国の宇宙論、最後は三大宇宙論の中では比較的マイナーな「宣夜説」であります!!
これはどういう論かというと、実はかなり今風です。
「天には形体が無く虚空である」
「天体は虚空の中に浮かんでおり、どこにも繋がれていないため、それぞれが固有の動きをする」
「天には果てがない」
「そこにある運動法則は”気”の動きで決まる」
などなど、これがもし発展深化していったら、現代の宇宙物理学と同じような結論に達していったんじゃないかと思われるような表現が出てきます。
後漢末期の蔡邕(さいよう 133-192)は、
「宣夜の説は、絶えて師法なし」
と述べ、この説の孤立的状況を伝えています。
しかしこの説は後漢よりも前、戦国時代にあの『荘子』の「逍遥游萹」や、東晋時代に『列子』の「湯門篇」にもみられます。
晋代(265-420)に著された『晋書』の「天文志」や、三国時代の人物で宣夜論者だったとされる楊泉の『物理論』における
「宇宙には気が満ちており、天地も星も気であり、その運動法則も気の動きによって決まる。」
という、僕らからすれば聞きなれた感のある「気一元論」が、やっぱり好きなんですがね。
しかし、この宣夜説は惜しくも発展せずに、歴史の陰に埋もれてしまいました。
漢代以降、中国の宇宙論は渾天説を中心に推移していったようです。
続く
【参考文献】
『中国古代天文学簡史 日訳版』浅見遼訳 近代出版
『中国天文学研究』小沢賢二著 汲古書院
『東洋天文学史論叢』能田忠亮著 恒星社
『中国天文学・数学集』薮内清 編 朝日出版社
『古代中国の宇宙論』浅野裕一 岩波出版
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2018.04.17
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15日の日曜は、北辰会の勉強会に参加してきました!!
午前中は実技訓練。
今回、脈診を中心に、徹底的な実技訓練です。
脈診するにも、体の使い方(フォーム)、指の使い方(運指)が大事。
これがきちんと出来てないと、何年やっても脈診が分かりません。(苦笑)
午後は鍼灸大仙堂院長、山本克仁先生による「北辰会方式とは」。
北辰会の歴史から内容まで、分かりやすく説明して下さいました。
極めて重要なのは、
「北辰会は現代中医学を用語と理論のベースに置いてはいるが、本来の内経の言う”気一元”の世界観で治療を行っている。」
という部分。
北辰会を、単なる中医学派の一つ、と思っている方、間違っていますよ。(゜レ゜)
北辰会は気一元論、大極陰陽論という哲学的な世界観に基づく、「鍼灸弁証論治派」であります。
そして最後は藤本新風副代表による「胃の気の脈診」。
実は来月、同じ内容で私が東京で講義します。
僕が北辰会にチョイチョイ出入りするようになった約20年前から、
「脈診と言えばアキノリ先生(新風先生の本名)。」
と言われるほど、昔から熱心に脈診の研究と実践を行ってこられた新風先生。
初心者用に基本を押さえつつも、なるほどサスガ!と唸る内容が随所に入った講義でした。
来月の講義内容に、キッチリ反映させようと思います。<m(__)m>
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2017.08.10
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症状が起こっている本質を治療することを「本治」という。
症状(現象)を治療することを「標治」という。
東洋医学では、現象の本質を「気の歪み」に求める。
そしてその歪みが起こった原因を、「気一元論」や「大極陰陽論」という世界観で分析していく。
・・・で、我々鍼灸師は、最終的に「経穴」に「鍼灸」をして、「気を動かすことで」治療する。
よく、何もわかっていない人が、東洋医学を揶揄して、
「東洋医学は本治本治というが、例えば1日中PCやっている人の肩こりの本治はPCを止めさせることだ!だから肩こりの人の肩の筋肉に鍼しないで、
足に一本鍼して”本治をしました”なんてのはナンセンスだ!」
と言う。
この人は全く分かっていない。
この論理では、1日中PCをやっているけど、肩こりを感じない人をどう説明するのか。
1日中PCをやっても、東洋医学の世界観、生体観で病態把握、分析し、治療し、結果的に肩がこらない、こりにくい体にしていくのが本治だと言っているのだ。
まあとはいえ、その患者さんの日常生活上の習慣が主訴発生のトリガーになっていることは少なくない。
極端に言えば、
「主訴を治したいなら、今の生活、辞めちゃえば?」
というアドバイスも、ありえなくはない。
さてそこで、その患者さんの人生についてまで考えることも重要。
何で辞めないのか。
なぜその環境、状況を選ぶに至ったのか。
そういう観点、視点を持って、よくよく話を聞くと、思いがけないところにデッドロックがかかっていること少なくない。
そこで、冷静、的確にアドバイスして、結果的にそこがうまく動くと、主訴が取れ、人生が変わったりする。
あれだけ取れなかった「気の歪み」が、あっけなく取れたりする。
これも本治。
むしろこっちこそが本治か。
でもこの場合の「本」は、病気でなしに、人間を真剣に診てないと、なかなか見えない。
患者さんも、術者も、「見ないふり」していることもある。
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2017.02.24
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これまでのお話
長くなってきましたが、ここらでいったん締めましょう。
◆我々が動かしているのは、本当に衛気か?
伝統的な東洋医学の理論に基づき、精密に四診合参して弁証論治を行う、北辰会方式の枠組みの中に、
「手を翳して」
行う体表観察(東洋医学的診察術)のことを
「衛気診」
と位置付けて採り入れ、その観察結果に基づいて、
「鍼を翳して」
補瀉(※)を行い、東洋医学的に
「治る力を最大化する」
治療を行う、という診察術、治療術は今後、北辰会を超えて、鍼灸界のメジャーになるか。
(※)補瀉については 補瀉 目次 参照
・・・正直、微妙かも。(苦笑)
でもまあ、キチッと理解、習得し、方法論の一つとして持っておくと、臨床レベルで武器になることは間違いないと思います。
あと、もっと位置付けを明確にするなら、実際に
「どういう場合に」
衛気診と、衛気に対する治療を選択するべきか、という問題において、単純に
「小児などの敏感、過敏な患者」
という以外の、明確な診断学的な位置付けも必要ですね。
・・・ということで、まだまだ解決するべき問題は多くあると思います。
〇
ところで、我々が動かしているのは、本当に衛気なんでしょうか?
実際にやってみると、時になぜ、あそこまで大きな変化が起こるのか、という問題については、
にいくつか仮説を挙げましたが、それ以外には何か考えられないか。
一つには、
「人体内外の世界の境界」
なんですよね、衛気の層は。
北辰会方式では、
「枢(すう、とぼそ)(※)」
つまり腹部や奇経、少陽枢機、少陰枢機を巧みに動かすことによって、一本の鍼で気を大きく動かす、という理論、手法をよく使います。
(もちろん、中途半端に配穴のみ真似すれば非常に危険です。)
(※)「枢」については 「三陰三陽」という考え方 8 参照
この考え方からすれば、衛気の層というのは、内外の気の境界線であり、一種の「枢」とも考えられます。
空気も飲食物も、人体の「外」、気一元論からすれば、外界にある「気」です。
人間は外界にある「気」を体内(ここでは外界に対して”内界”とでも言いましょう。)に採り込むことでしか生命を維持できません。
その、外界の外気と、内界の内気のバランスの調整を行うのが衛気の操作なのかもしれない、と考えると、色々と面白いことが妄想できます。(笑)
・・・まあ、僕ごとき青二才が、ここであまり迷言妄説を吐いても仕方ないので、この妄想は今後、臨床しながら、古典にも照らし合わせつつ、よーく検討していきたいと思います。
気が向いたら続く
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2016.08.31
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これまでのお話
東洋医学は宗教か。 10 参照
さて、どんどんいきましょう。
◆宗教の定義の問題
このシリーズは、なかなかデリケートな話であります。
僕のような無知蒙昧、浅学菲才が扱っていいような話ではないのかもしれませんが、まあ書き始めちゃったんで、勢いで書いています。(笑)
この問題について、実際に宗教を信仰したりしている色々な先輩や友人なんかにも、意見を聞きながら書いています。
そこでよく出てきたのが、
「宗教といっても、定義が様々で、人によってとらえ方が違うところがあるからなー。」
というご意見。
これはごもっともで、調べると、専門家である宗教学者に言わせても、宗教の定義は何百もある、なんておっしゃる学者さんもいるようです。
一口に宗教といっても、その人によって宗教観が違う。
そしてそれは「医学」「医療」に対する定義も同様であり、何百ほどではないにせよ、これも人によって違う。
となると、万遍なく、かつ矛盾なく語りつくそうなんて思ったら、話がますます難しく、ややこしく、かつ壮大になる。
コントロール不能になる。(苦笑)
てか無理。(^^;)
そう言ってしまっては上手くないので、ここでは、ある程度コンパクトに区切って、サクッと自分なりの定義(というか考え方)を述べ、
自分なりの、今のところの考えを述べて終われればいいかな、と思っています。
〇
最初にも書いたけど、僕なりの「宗教」の定義は、
「人間を幸せに向かってあまねく教え導くもの、教え」
と考えており、「医学」の定義は
「人体の仕組み、病気の仕組みを論理的に研究し、治療に役立てる学問」
と考えております。
・・・で、東洋医学だって、西洋医学だって、歴史的変遷を見てもそうだし、病気が治って健康になる、ということは、
当然ながら人の幸福と切っても切れない関係にありますから、医学と宗教が無関係ではない、というのは当然なんですが、
東洋医学の場合は、人体の仕組み、病気の仕組みを考える時に、現代科学で証明されてないもの(気や臓腑経絡)の存在を前提とした人体観な訳ですし、
実践している医者の数の上から考えても、日本の医学界、医療界の全体から見たら、圧倒的少数派な訳ですから、いかにも怪しい、ヘンな奴ら、
オカルト論者、カルト宗教、と思われがちであるし、僕自身もかつてはそう思っていた、というお話をしてきました。
しかしながら、僕の場合は縁あって「鍼灸」という道具を使って、本気で患者さんを治しにかかってみたところ、どうしても「東洋医学の理論、考え方」を採用しないと、
自分の中で納得して前に進めなかった、という現実があった、だから東洋医学の学術を採用した、というお話もしました。
そこで初めて東洋医学の言う「気や経絡」というものの存在を実感し、徐々に信じ、理解するようになり、拙いながらも少しは運用できるようになり、
今に至る、というお話をしました。
では、もう少し突っ込んで、再確認しておきたいのですが、「”東洋”医学」というのは、「”西洋”医学」とどう違うんでしょうね?
西洋医学では、
「人間は60兆(2013年以降は37兆説が有力)の細胞の集合体であり、生命というのは、遺伝子を自己複製するシステムである」
と、機械論的に説くわけですが、東洋医学の場合は、
「この世の森羅万象は”気”から出来ており(気一元論)、大自然、大宇宙と人間(小宇宙)は分かれているけど一つのものである(天人合一思想)。」
と、生気論的に説きます。
東洋医学のこういう発想、医学の前提となる自然哲学が根底にあればこそ、目に見えないけど”ある”と思われるような「臓腑経絡」という概念を、
「気一元」の立場、世界観で医学理論化する、という発想も出てくるわけです。
西洋医学には、気や経絡は出てきません。
今後、西洋医学が進歩すれば、東洋医学のこういった概念も発見、解明されて云々・・・、という人がいますが、僕個人的には、
それは無理じゃないかなー、と思っています。
(概念的、部分的に近いものが発見できたとしても、あくまでも”近いもの”に過ぎないんじゃないかな、と思います。)
この違いは、自然に対する根本的認識、根本的な哲学の違いから、こうなります。
ほいじゃー、自然哲学って何でしょう。
次回いきましょう。(笑)
続く
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2012.07.08
2016.05.09
2016.04.12
2016.04.28
2015.06.04
2012.12.23
2014.02.17
2014.04.26
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2024年 10月の診療日時2024.09.19
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2024年 9月の診療日時2024.08.03
2024年7月の活動記録2024.08.01
2024年 8月の診療日時2024.07.10
患者さんの声(70代女性 目の痛み、不安感)2024.07.05
2024年6月の活動記録2024.07.01
2024年 7月の診療日時2024.06.05
2024年5月の活動記録2024.06.01
2024年 6月の診療日時2024.05.10
2024年4月の活動記録2024.05.01
2024年 5月の診療日時2024.04.13
(一社)北辰会、組織再編。2024.04.02
2024年3月の活動記録2024.04.01
2024年 4月の診療日時2024.03.14
2024年2月の活動記録2024.03.01
2024年 3月の診療日時2024.02.15
2.17(土)ドクターズプライムアカデミアで喋ります!2024.02.04
3.10(日)(公社)群馬県鍼灸師会で講演します!2024.02.03
3.3(日)「浅川ゼミ会」にて講演します!2024.02.02
2024年1月の活動記録2024.02.01
2.25(日)順天堂東医研、第5回特別公開シンポジウム「日本とインドの伝統医学」に登壇します!!2024.02.01
2024年 2月の診療日時2024.01.11
2023年、9月~年末の活動一覧2024.01.05
診療再開!!2024.01.01
2024年 1月の診療日時2023.12.30
2023年、鍼療納め!!2023.12.21
(一社)北辰会、冬季研修会のお知らせ2023.12.01
2023年 12月の診療日時2023.11.26
患者さんの声(60代女性 背部、頚部の痒み、首肩凝り、高血圧、夜間尿)2023.11.25
患者さんの声(70代女性 耳鳴、頭鳴、頭重感、腰下肢痛、倦怠感)2023.11.22
12.3(日)市民公開講座、申し込み締め切り迫る!!2023.11.21
今週からの講演スケジュール2023.11.16
日本東方医学会学術大会、申し込み締め切り迫る!!2023.11.01
2023年 11月の診療日時2023.10.10
清明院14周年!!2023.10.04
12.3(日)市民公開講座やります!!2023.10.01
2023年 10月の診療日時2023.09.23
第41回、日本東方医学会学術大会のお知らせ2023.09.22
第55回、順天堂東医研に参加してきました!2023.09.21
第27回、日本病院総合診療医学会で発表してきました!!2023.09.20
Dr’s Prime Academiaで喋ってきました!2023.09.01
2023年 9月の診療日時2023.08.18
第54回、順天堂東医研で喋ってきました!2023.08.17
順天堂東医研の学生さんと、「森のくすり塾」へ。2023.08.16
診療再開!!