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2021.11.12
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夜な夜な、10.24に京都タワーで行われた、日本東洋医学会、2021関西例会を視聴しました!!
(オンデマンド配信最高!!笑)
私も一応名前だけ会員になっている(一社)日本東洋医学会ですが、最近、毎日のように地方会のお知らせが来ます。笑
でもこれは素晴らしいことです。
オンライン配信が出来るようになったことで、比較的簡単に、日本全国の有名な先生を招いて講演してもらえる。
会場までいかなくても、しかも時間に縛られずに、いつでもどこでも講演が聴ける。
地方の先生方にとって、この上なく有難いのではないでしょうか。
しかも喋るのがゆっくりな先生の講演は、オンデマンドなら倍速再生できる。笑
完成度の高いスライドはスクショしておいて復習できる。
欲しい情報を、以前よりも全然効率的に得ることが出来る時代、ついに到来です。
向学心のある人にとっては、もはやこの上ないシステムが完成しつつあるでしょう。
まあその分、よく指摘されるように、リアルでの付き合いがしにくくなるというマイナス面はありましょうが、それがしたい人は会場に行けばいい訳なので、
今後はハイブリッド開催が基本になるでしょうね。
まああとは、簡単に出来てしまう録音、録画、流出等の問題もよく言われますが、これは恐らく、厳罰化が進むでしょうし、今は正義感旺盛なネット自警団も多数いますので、問題ないでしょう。
あとは、便利な分、供給される情報がこれまでよりも圧倒的に過多になりますので、そこら辺にいる、ただの頭でっかちにならないように、
情報を受容する側の取捨選択能力、情報処理能力はこれまで以上に、大いに問われるでしょうね。
余分な情報をいちいち拾わないこと、また、必要と感じて拾った情報に関しては、本当に必要だったかどうかきちんと咀嚼して、必要であれば自分のものにすること、
まあよく言う、「情報リテラシー」ってやつが、今後ますます問われるでしょう。
今回、なんといっても最初の「煽り映像」が素晴らしかったです。笑
僕の好きな、種々の格闘技イベントでも、イベント開始前、あるいは試合前の会場のテンションを上げるのに欠かせないのが、カッコいい音楽と映像で演出される「煽り映像」なわけですが、
今回、どなたが作ったのか分かりませんが、映画のオープニング(スターウォーズ風?)のような映像、大変素晴らしかったです。
やはり今後は、講演者やそのスタッフにはYoutuber的な素質が求められそうですね。苦笑
これも時代の要請です。
(真贋を見分ける目が、ホントに問われますね)
今回も印象的な講演が多く、ザッと挙げると以下の通りです。
中村真理先生の「末梢性顔面神経麻痺完全脱神経型に対する鍼灸治療の効果-発症1年以内、14名-」
☞顔面神経麻痺の柳原スケールは清明院でも使っていますが、詳細なデータについてまでは知らなかったので、大変参考になりました。
篠原明徳先生の「肝気虚の理法方薬」
☞肝の病理の中でも、等閑視されがち、あるいは腎気虚と混同されがちな「肝気虚」という病理ですが、今回、非常に分かり易く解説して頂きました。
北村順先生の「循環器領域における漢⽅の現状と今後」
☞心臓、腎臓などの循環器領域の疾患に対して、東洋医学は、古代から当たり前に扱ったきた訳ですが、現代医学的なエビデンスは非常に少なく、近年、エビデンス構築、臨床実践が進んでいるようです。一臨床家として、この動きは見逃せないですね。
山本昇伯先生の「東西医学融合の2例と分断の2例」
☞以前から存じ上げている山本先生ですが、主に眼科領域で、漢方医的、総合内科医的な視点をもって診療にあたっておられる先生で、とても分かり易いご講演でした。
福原慎也先生、千福貞博先生の「新型コロナウイルス感染症の諸症状に対して葛根湯合小柴胡湯加桔梗石膏が奏功した透析患者の1例」
☞これも非常に刺激的な症例で、透析患者の重症化リスクは非常に高いのですが、早期(疑い段階)で漢方薬で介入して見事に効果を上げた症例でした。個人的にも、コロナ禍以降、最もお世話になった漢方は「桔梗石膏」です。笑
王宝禮先生の「本邦の歯学部における漢方医学教育の現状と考察」
☞これもなかなかレアな内容。虫歯だけでない、あらゆる口内トラブルに対して、東洋医学は有用だと思います。歯学部でも、積極的に東洋医学教育、行うべきだと思いました。
・・・まあー、この他にも面白い講演が多数あり、関西のまだ見ぬツワモノの先生方、素晴らしいと思いました。
また今回は、いつもお世話になっている北辰会の漢方医、竹本喜典先生も座長として参加されており、先生も今後ますますご活躍されるのだろうと思いましたね。
さて、今週末は日本伝統鍼灸学会もありますし、東洋医学会の九州支部もあります。苦笑
(これもオンデマンドなんで、両方の聴きたい講演のみ聴ける!!)
便利な仕組みを最大活用して、サクサクと欲しい情報を拾って、サクサクと鍼灸臨床家としてのレベル上げに勤しみましょう☆
〇
2019.10.19
清明院では現在、院内診療、訪問診療ともに多忙のため、求人募集しております!
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10.17の木曜日は、順天堂東医研に行ってきました!!
(「順天堂大学医学部 東洋医学研究会」と表記すると長ったらしいので、今後はこうします。(*‘∀‘))
今回は吉祥寺中医クリニックの長瀬眞彦先生の講義「漢方エキス剤の効かせ方~人生すべからくマッチング〜」でした。
先生の講義は非常に分かり易いです。
いつもながら、高度な症例を交えつつ、学生の興味を引き付けつつ、有名な漢方や生薬に関して、上手に説明しておられました。
今回も漢方を煎じながらの講義でしたが、今回煎じて試飲した薬は「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」です。
この薬は超有名な「小柴胡湯」の変法であり、あの『傷寒論』に、「少陽病」の薬として登場する薬です。
「少陽病」を含む記事 参照
かの折衷派の代表格である和田東郭をして
「半夏瀉心湯の代わりになる薬は後世方にはない。」
とまで言わしめている名方です。
和田東郭という人物 参照
数十年前に蓮風先生も注目されて、この方剤が目当てとする「心下痞(しんかひ:みぞおちの痞え)」という所見を如何にとるか、北辰会方式としてのやり方を教えて下さいました。
(それを初めて関東で発表した時の講義で、モデルになって鍼してもらったのでよく覚えています。)
今回の講義で先生が強調しておられたのは「マッチング」、つまり、その漢方が適応となる「レスポンダー」を如何に見つけるか、という部分です。
これをするには、やはり基礎的な東洋医学理論や、脈診や舌診などの基礎的な診察法を身に付けることが重要で不可欠だ、ということです。
ここを上手に、効率的に説いていくのが僕の仕事かな、と思いますね。(^^)
他にも
「エキス剤と煎じ薬、どっちが効くの??」
とか、
「そもそもどう違うの??」
という話や、半夏瀉心湯も煎じとエキス剤では全然違う味で、なかなか興味深かったです。
2019.04.10
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最近のお話し
参照
ここまで述べてきた、「桂枝湯」「麻黄湯」、”桂麻の剤”から派生する方剤は非常に多い。
また、『傷寒論』以降に著された様々な方剤の書も、結局は『傷寒論』の処方を基本として、いわば「後出しじゃんけん」的に色々なことを言っているものは多い。
(・・・言い方が悪いか。(苦笑) ”伝統医学の継承と発展”だね。)
なので、『傷寒論』は数千年先まで影響を与える、怪物のような本なのだ。
かつて、とある先生から紹介されて、知る人ぞ知る漢方の大家(故人)の先生にお会いした時、その先生は
「もう60年も毎日『傷寒論』を読み続けているが、それでも分からないところがある。。。」
と仰っていた。(苦笑)
そのぐらい、深遠な世界を表現した本なのだ。
まあ大体、『易経』にせよ『内経』にせよ『論語』にせよ、古代中国の古典というのは、それだからこそ魅力があるんだろう。
・・・話が逸れたが、麻黄湯の加減方として、東洋学術出版社『中国傷寒論解説 続篇』には、「小青龍湯」「大青竜湯」「葛根湯」の3方剤が紹介されている。
このうち、「小青龍湯」と「葛根湯」についてはすでに語ったので、「大青竜湯」だけ語らないのも、なんか気持ち悪い。。。(^^;)
・・ということで、今日は「大青竜湯」のお話。
よく、柴胡剤でも「小柴胡湯」「大柴胡湯」、承気湯類でも「小承気湯」「大承気湯」とあるように、方剤名の前に「大」「小」とついている場合がありますが、
当たり前ながら、これは効果の強弱を示すものではありません。(苦笑)
似ているところがあり、兄弟のようでありながらも、似て非なる方剤を、このように呼び分けています。
大青竜湯も、出典はもちろん『傷寒論』であり、
太陽中風.脉浮緊.發熱惡寒.身疼痛.不汗出而煩躁者.大青龍湯主之.若脉微弱.汗出惡風者.不可服之.服之則厥逆.筋惕肉瞤.此爲逆也.
傷寒脉浮緩.身不疼.但重.乍有輕時.無少陰證者.大青龍湯發之.
とあり、『金匱要略』では
病溢飮者.當發其汗.大青龍湯主之.小青龍湯亦主之.
とあります。
まあ簡単に言うと、大青竜湯の場合は、
「表面が冷えて、結果的に浅いところに熱が籠ってしまったもの」
に使います。
大青竜湯の中に入っている「石膏」という生薬は、浅い部分に籠った熱を取るための非常に重要な生薬です。
ですので、麻黄湯からの加減方をまとめると、
麻黄湯の場合は表面を温めて汗をかかす、
小青竜湯の場合は表面の冷え+水邪の突き上げ、
葛根湯の場合は表面の冷え+うなじのこわばり、
大青竜湯で表面の冷え+それによって籠った浅い部分の熱、
というバリエーションがあることが分かります。
鍼の場合も、カゼひきさんを治療する場合はこのように、
「どういう体質の人に」
「どういう邪気が襲って」
「結果的に表面で何が起きていて」
「深い部分では何が起きているのか」
を考えながら治療していきます。
なので、漢方薬の考え方と、一緒であり、ある意味応用的です。
ですので、鍼灸師にとっても、『傷寒論』理解は非常に大事なのです。
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2019.04.07
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最近のお話し
参照
昨日、小青竜湯に関して書いたので、今日は小青龍湯の元となる、超有名な漢方薬である麻黄湯についても、ついでなんで書いておきます。
麻黄湯というのも、『傷寒論』に出て来る方剤であります。
構成生薬は麻黄・杏仁・桂枝・甘草の4種であり、もちろん主薬は麻黄であります。
麻黄は桂枝と並んで、生薬の王様級に有名ですね。
この二つが入っている方剤を「桂麻の剤」と呼んで、実に様々なバリエーションがあります。
これの出典である『傷寒論』中には、
太陽病.頭痛發熱.身疼腰痛.骨節疼痛.惡風無汗而喘者.麻黄湯主之.
太陽與陽明合病.喘而胸滿者.不可下.宜麻黄湯.
太陽病.十日以去.脉浮細而嗜臥者.外已解也.設胸滿脇痛者.與小柴胡湯.脉但浮者.與麻黄湯.
太陽病.脉浮緊.無汗發熱.身疼痛.八九日不解.表證仍在.此當發其汗.服藥已微除.其人發煩目瞑.劇者必衄.衄乃解.所以然者.陽氣重故也.麻黄湯主之.
脉浮者.病在表.可發汗.宜麻黄湯.
脉浮而數者.可發汗.宜麻黄湯.
傷寒脉浮緊.不發汗.因致衄者.麻黄湯主之.
脉但浮.無餘證者.與麻黄湯.若不尿.腹滿加噦者.不治.麻黄湯.
陽明病.脉浮.無汗而喘者.發汗則愈.宜麻黄湯.
脉浮而緊.浮則爲風.緊則爲寒.風則傷衞.寒則傷榮.榮衞倶病.骨節煩疼.可發其汗.宜麻黄湯.
太陽病.脉浮緊.無汗發熱.身疼痛.八九日不解.表證仍在.當復發汗.服湯已.微除.其人發煩目瞑.劇者必衄.衄乃解.所以然者.陽氣重故也.屬麻黄湯證.
太陽病.頭痛發熱.身疼腰痛.骨節疼痛.惡風無汗而喘者.屬麻黄湯證.
陽明中風.脉弦浮大而短氣.腹都滿.脇下及心痛.久按之氣不通.鼻乾不得汗.嗜臥.一身及目悉黄.小便難.有潮熱.時時噦.耳前後腫.刺之小差.外不解.過十日.脉續浮者.與小柴胡湯.脉但浮.無餘證者.與麻黄湯.不溺.腹滿加噦者.不治.
太陽病.十日以去.脉浮而細.嗜臥者.外已解也.設胸滿脇痛者.與小柴胡湯.脉但浮者.與麻黄湯.
・・・と、至るところの条文に出てきます。(苦笑)
(なげえ~~ 読むのつれえ~~ (~_~;))
・・・まあ要するに、非常に汎用性の高い方剤であり、病が浅いところにあるものだけでなく、少し深いところに入っている場合でも、咳が出ていて、
汗が出ていないような場合などには非常に使える方剤であることなどが分かります。
体表を温め、一気に発汗させて治せるパターンのものをバシッと治す薬、と言えると思います。
ですので、すでに発汗しているようなタイプの人や、体質的、病理的に熱傾向の人、また、必要な水分(津液)や血液が不足しているような人が迂闊に使うのは危ない、となります。
因みに、ここでは詳しく述べませんが、『金匱要略』には、射干麻黄湯、厚朴麻黄湯、甘草麻黄湯という、麻黄湯のバリエーションも紹介されています。
因みにこの麻黄という生薬には、エフェドリンというアルカロイド(天然由来の有機化合物)が含まれています。
(単離に成功し、”エフェドリン”と命名したのは明治時代の日本人だとか。)
エフェドリンは、覚せい剤で有名なメタンフェタミンと分子構造がそっくりで、スポーツ選手などが競技前に服用したらドーピングで失格になっちゃうそうです。(^^;)
それだけでも、よく効きそうな感じがしますね。(笑)
しかし、単離できたからと言って、麻黄湯はエフェドリンが効くんだ、と考えるのではなく、麻黄・杏仁・桂枝・甘草の生薬4味からなる「麻黄湯」となっていて初めて、
『傷寒論』に書いてあるような効果が期待でき、様々なバリエーションが設定できるのだと思います。
そこを勘違いしない方がいいと「僕は」思っています。
〇
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2019.03.05
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ここまでのお話し
小建中湯について 参照
前回、小建中湯の話がエラク中途半端に終わったので、続きを書きます。(^^;)
小建中湯は、実は以前このブログにもチョコッとだけ登場しています。
小建中湯は、桂枝湯のアレンジ版であることは前回お話ししました。
しかし、ここら辺を細かく話していくと、『傷寒論』の太陽病の講義みたいになってしまうので、ここではしません。(^^;)
(興味ある人は、無数に出ている『傷寒論〇〇』という本を5冊くらい買って勉強しましょう。)
小建中湯は、今日では東洋学術出版の『中医臨床のための方剤学』で「脾虚肝乗」という言い方をするように、脾の臓が弱ってしまって、肝の臓とのバランスが崩れたものによく使われます。
もちろん、この薬のもともとの出典は『傷寒論』ですから、寒邪に傷られた傷寒病の、ある段階においても使いますし、これをやって治らなかった場合に小柴胡湯を使う、という流れもあります。
「小柴胡湯」を含む記事 参照
また、『傷寒論』の中の小建中湯適応の脈診所見に「陽脈濇、陰脈弦」という、解釈次第では色々拡大出来るような脈状の表現も出てきます。(*‘∀‘)
あるいは『金匱要略』の中にも、この薬は”虚労病”、”黄疸病”、”婦人病”のところに出てきます。
さらに『金匱要略』では、目的に応じて、小建中湯に黄耆(おうぎ)を加えて「黄蓍建中湯」という薬を提示していたり、少し時代が下って中国唐代、
孫思邈(そんしばく 581?-682)の『千金翼方』では小建中湯に当帰(とうき)を加えた「当帰建中湯」があったり、日本の江戸期、あの華岡青洲(1760-1835)の
『瘍科方筌(ようかほうせん)』では、この「黄蓍建中湯」と「当帰建中湯」を組み合わせて、さらに膠飴を使わずに「帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう)」という方剤を創方し、
癌が潰れて膿が止まらず、日々憔悴していくほどの重篤な病人に使用していたようです。
華岡青洲という人物 参照
・・・まあしかしこの、
「肝と脾のバランスが崩れている」
ことが、カゼから花粉症からアトピー、リウマチ、癌まで、あらゆる現代病の根本原因になっていることは、臨床上、実に多いと思います。
ここんとこをシンプルに調整してくれる薬だからこそ、約2000年の風雪に耐えて来れたんでしょうね。
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2019.02.02
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これまでのお話し
「腹哀」という経穴 ⑤ 参照
◆『吉田家腹診秘録』ではどうか。
前回、鍼灸師なら知らない人はいない「夢分流腹診図」において、腹哀穴が位置する「肺先」と呼ばれる部位について、竹下の妄想を少しだけ書きました。
ああいった妄想関係の話は、実はまだまだ至る所に無数にあるんですが、あまり書くと頭のおかしいやつだと思われそうなので、少しにしておきます。(苦笑)
しかし、それで臨床をやった結果、うまくいくことが意外と多いということも付言しておきます。
・・・ところで、蓮風先生が2004年に出版した『鍼灸医学における実践から理論へ パート3』の中で取り上げた、江戸期の腹診書の中に『吉田家腹診秘録』という書物があります。
これを見ると、蓮風先生の本では、腹部陽明経よりも「内側に」反応のある腹証ばかりが紹介されていることに気付きます。
陽明経よりも外、とりわけ腹哀穴に相当する部位に反応のある方剤では、呉茱萸湯と当帰四逆加呉茱萸生姜湯の二方剤の腹証だけです。
呉茱萸湯は『傷寒論』に出てくる処方で、中焦をガッツリと温める、現在でも比較的使われる処方です。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯も『傷寒論』に出てくる処方で、処方構成は当帰四逆湯+呉茱萸+生姜ですから、簡単に言えば血虚+寒邪+寒飲の者に用いる薬で、
中焦を温める働き+補血作用を期待した方剤です。
(あまりにも簡単に説明し過ぎで、湯液家の先生方から怒られそうですが。。。(;’∀’))
中医学ではどちらも「温裏剤」のグループですね。
温裏する必要があるような場合に、心窩部から季肋部にかけて反応が出てくる部位であると、『吉田家腹診秘録』の著者は認識している、ということです。
(因みに、柴胡剤のグループでは、心下は少し下目に、季肋部は少し内側目に描かれているのも興味深いところです。)
図では、呉茱萸湯は左右対称に、当帰四逆加呉茱萸生姜湯の方は右のみに出ています。
(↑↑呉茱萸湯の左右対称については、”此の毒左右同”と強調しています。)
あと、季肋部において陽明経よりも若干外に反応が記載されている処方は「葛根湯毒と陽明の合併の図」と、「太陽と少陽の合病の図」、
「十棗湯」「桂枝人参湯」「小柴胡湯」「大柴胡湯」「柴胡加桂枝湯」「桂枝加大黄湯」では、脾募よりもやや外側に反応が出ることが記載してあり、
これらも場合によっては勘案するべきでしょうね。
(細かい解説は煩雑になるので、ここでは避けます。<m(__)m>)
また上記方剤の多くで、「右側」が強調してあったのも興味深いところです。
夢分流腹診図においても、右の「肺先」の下外側にのみ「膽」の診処が存在しており、ずいぶん前に書きましたが、五藏六府の中の「胆の腑」の特殊性を考えると、
そこに一番近いところに「腹哀穴」が存在していることは、偶然でないと思います。
もうちょっと続く
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2019.01.31
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これまでのお話し
「腹哀」という経穴 ④ 参照
◆夢分流腹診で言うと「肺先」に位置する。
前回、「腹哀」穴のすぐ上には「日月」穴と「期門」穴があり、これらは「膈」と大きく関わる経穴である、という話をしました。
「膈」については北辰会でも非常に重視していますが、『経方医学』で有名な、京都の江部洋一郎先生の考え方も参考になりますので、興味のある方は読んでみるといいと思います。
(『経方医学4』小柴胡湯のところに詳述されています。)
夢分流の腹診では、「腹哀」穴の位置は「肺先」と呼ばれます。
さて書こうかな、と思ったら時間が無くなったので、また今度。(゚∀゚)
続く
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2016.06.28
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これまでのお話
4.『傷寒論』辨太陽病脉證并治下第七.の、柴胡桂枝乾薑湯方のところに、
「傷寒五六日.已發汗而復下之.胸脇滿微結.小便不利.渇而不嘔.但頭汗出.往來寒熱.心煩者.此爲未解也.柴胡桂枝乾薑湯主之.」
と、出てきます。
これは、カゼ引いてちょっと時間が経って、まだ完全に治りきってない時に、頭に汗が出る場合を述べています。
ちょっとこじれたやつです。
これは比較的よく診ますね。
5.また、同じところに、
「傷寒五六日.頭汗出.微惡寒.手足冷.心下滿.口不欲食.大便鞕.脉細者.此爲陽微結.必有表.復有裏也.
脉沈亦在裏也.汗出爲陽微.假令純陰結.不得復有外證.悉入在裏.此爲半在裏半在外也.脉雖沈緊.
不得爲少陰病.所以然者.陰不得有汗.今頭汗出.故知非少陰也.可與小柴胡湯.設不了了者.得屎而解.」
とも出てきます。
これは、カゼがこじれて、中途半端な状態になってしまった時に、頭から汗が出る場合があることを述べています。
そんな時は小柴胡湯がいいと。
小柴胡湯については、
「小柴胡湯」を含む記事 参照
まあここでは、深くもなく浅くもないような、中途半端な位置に熱がこもってしまった場合に、「頭汗」という現象が起こることを教えてくれています。
続く
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2015.06.15
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5
「四逆散」というお薬 6
「四逆散」というお薬 7 参照
さて、今日ももう一人いきましょう。
・・・まあ、こんなことやってるとキリがないんだけど(笑)、いい機会なんで、僕が注目してる漢方家の紹介がてら、どんどんいきましょう。
今日は藤平健(ふじひらけん 1914-1997)先生です。
この先生も、昭和の漢方を支えた一人です。
藤平先生は、四国(香川県丸亀市)出身の先生であり、実は「四逆散」というお薬 5で紹介した奥田謙蔵先生のお弟子さんです。
大学生の頃に脊椎カリエスに罹り、それを奥田先生の漢方で治してもらったことから、弟子入りしたようですが、その後の活躍をみると、師匠に負けない、スゴイお弟子さんだと思います。
なんかこう、本を読んでいても、奥田先生と藤平先生からは、優しいというか、心が広いというか、大らかというか、そういう雰囲気を感じます。
(湯本求真先生の反動なんでしょうかね。。。分かりませんが。(笑))
まあともかく、藤平先生の『傷寒論演習』には、
「四逆散は少陰病のところに書いてあるけど、実際は少陽病の薬で、使い方は大柴胡湯と小柴胡湯の中間あたりと考えていたが、使っていくうちにもっと虚証よりだと思うようになったよー。」
と述べ、
「傷寒論の条文には書いていないが、先輩方の言う通り、ノイローゼなどの精神科疾患に良いと考え、使い方としては、細かい症状よりも、腹診が重要だよー。」
と述べ、
「全体の腹力(腹部の緊張)が中等度、胸脇苦満(肋骨下の緊張)が”左右差なく”中等度、心下痞鞕(みぞおちの緊張)が中等度、腹直筋の緊張が強い、
これらが揃えば、四逆散の腹と考えていいよー。」
と述べ、お弟子さんとの対話の中で、
「四逆散には水を捌く生薬は入っておらず、この場合の水邪は二次的なものと考えていいよー。」
とし、真武湯との鑑別や、芍薬甘草湯との違いに注目しているようです。
(抜粋意訳 by竹下)
因みに個人的には最後の部分、重要かな、と思います。
真武湯、四逆湯とだけでなく、芍薬甘草湯と四逆散を比較するのは、四逆散が、芍薬甘草湯に柴胡・枳実を入れた方剤、とみることも出来るからですね。
〇
・・・とまあ、全体としてはそんなに個性的なことは言っていないが、大塚敬節先生、矢数道明先生と同じく、腹診に着眼したことと、四逆散の胸脇苦満には左右差が無いとか、
自身の経験から、独特の見解も少し述べておられます。
大塚先生、矢数先生の見解については、
個人的には、少陽病の薬であるにもかかわらず、左右差が出ない、ということを強調しておられるのは、面白いなあ、と思ったりします。
あくまでも少陽「経」ではなく、内外の不和だ、というメッセージなんでしょうかね。
(単に経験則かもしれませんが、クリニカルパールではないかと思います。)
「四逆散」というお薬 9 に続く
〇
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2015.06.13
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5 参照
さて今日も、四逆散に関する、別の先生のご意見。
今日は矢数道明(やかずどうめい 1905-2002)先生です。
この先生も、大塚敬節先生や奥田謙蔵先生と並んで、1905-2002の、実に96年間を生きた、近代を代表する漢方家の一人です。
亡くなる前年の、95歳まで外来診療を続けておられたことは有名です。
(スゲエ!!(;゚Д゚))
この先生の診療所(温知堂)は清明院のすぐ近く、新宿にあり、現在もご遺族によって引き継がれております。
この先生の師匠である森道伯先生(1867-1931)も、後世派の一派である一貫堂医学の創設者として、たいへん有名です。
この森先生も素晴らしい先生なので、そのうち紹介したいと思います。
(みんな本当にスゴイので、紹介し始めたらキリがないですな。。。(苦笑))
〇
まあともかく、矢数先生はその著書『漢方処方解説』の中で、
「四逆散は大柴胡湯と小柴胡湯の中間のものに用いる。」
と述べ、
「大柴胡湯よりも虚証で、熱状が少なく、肋骨下の緊張がやや弱く、小柴胡湯よりは少し実証で、お腹は肋骨下の緊張、腹直筋の緊張が中心で、
腹直筋の緊張は臍の周囲まで及び、手足のキンキンに冷えてる者や、癇の昂ぶる神経過敏症の者に用いる。」
と述べ、臓腑では
「肝の臓の実と、脾胃がやや虚。」
と述べ、たいへん応用範囲が広い薬であることを教えています。
まあ、矢数先生の解説の書き方としては、四逆散が大柴胡湯の変方だと述べた、和田東郭先生や浅田宗伯先生の見解を尊重しつつ、近代の湯本求真先生や龍野一雄先生の論を引いて、
大柴胡湯と四逆散の使い分け方、とりわけ、腹診における見分け方に重きを置いた、解説の仕方をしております。
この観点も、また重要です。
大塚先生の見解に、少し補足を加えた、という感じですね。
「四逆散」というお薬 7 に続く
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