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これまでのお話
「肺胃不和」という証 3 参照
◆「宣発・粛降」の根拠は??
今から約8年前、このブログ上で、東洋医学の言う、固有の意味としての「肺の臓」とかいかなるものか、という内容を、一般人や学生さんに向けて、
極力専門用語を使わないようにと配慮しながら、12回に渡って書きました。
今読むと、内容の稚拙さに赤面しますが、それも歴史の真実、あえて残します。(笑)
ここで重要なのものの一つとして、東洋医学の言う「肺の臓」というのは
1.気を全身に巡らせる働き
2.気を下げ、降ろす働き
を持っている、というお話をしました。
中医学の成書を読むと、1.の働きを「宣発(せんぱつ)」、2.の働きを「粛降(しゅくこう)」と書いてあります。
今日は、ここから少し突っ込んで、
「肺の臓には宣発・粛降作用がある・・・ほうほう、で、その根拠は??」
という話をします。
別に『黄帝内経』などの古典の中に「宣発・粛降」という言葉がある訳ではないようです。
(まあ『素問』五運行大論(67)に”宣発”という熟語は出てきますが、これは肺の作用のことを言っている訳ではないです。)
中医学の成書では、歴代の諸種の古典を総合して、肺の臓の生理作用を示す言葉として「宣発・粛降」という見出しをつけている、ということでしょう。
で、まず宣発については、
1.気化によって体内の脱気を排出する
2.水穀の精微を全身に巡らせる
3.衛気を巡らせることで汗を排出する
という3つの作用のことを言っています。
これは、『黄帝内経霊枢』決気篇(30)にみえる、
「上焦開發.宣五穀味.熏膚充身澤毛.若霧露之漑.是謂氣.」
という文章から持ってきているのかな、と連想させます。
決気篇での内容は、「気」という概念をさらに細分化して「精・気・津・液・血・脈」の6つに分けた場合、それぞれの定義ってどうなの??
っていう文脈の中での、「気」の話をしている部分に出てくる話なんですが、「肺の臓」の「気」への関わり(肺主気)を考えると、ここに書かれている「気」の働きを、
もっとも直接的にバックアップしているのが「肺の臓」である、というふうに理解した、ということでいいと思います。
続いて「粛降」ですが、単に「降」ではなく「粛清(しゅくせい)」の「粛」を入れて「粛降」と名付けているのはポイントかな、と思っています。
(粛清、怖いですねー)
続く
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2014.12.15
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これまでのお話・・・
「左肝右肺」に関して
「左肝右肺」に関して 2
「左肝右肺」に関して 3
「左肝右肺」に関して 4
「左肝右肺」に関して 5 参照
では続きいきます。
◆「左右」に関して補足
我々東洋医学がバイブル中のバイブルとする『黄帝内経素問』の中の「陰陽応象大論(5)」というところには、
「左右者.陰陽之道路也.」
と、出てきます。
(ちなみにこの「左右者陰陽之道路」という表現は、同じ素問の中の天元紀大論(66)、五運行大論(67)にも出てきます。)
この意味について、中国清代の超有名な学者である張志聡(1610-1674)先生は、弟子たちとともに書き上げた大著、『素問集注(そもんしっちゅう)』(素問の解説書)の中で、
「在天地六合.東南為左.西北為右.陰陽二氣.於上下四旁.晝夜環轉.而人之陰陽.亦同天地之氣.晝夜循環.故左右為陰陽之道路.」
と述べておりまして、これを竹下風に簡単に訳しますと、
「天地六合(宇宙)には、東南は左とし、西北は右とする。人の陰陽の二気も上下と左右を昼夜に循環している。故に左右は陰陽の道路だ~!」
となります。
(張志聡については、そのうち紹介しますね。)
また、以前このブログでも紹介した、中国明代の名医、張介賓(張景岳1563-1640)先生は、その著書、『類経』の中で、
「陽は左で昇る、陰は右で降りる」
と、述べました。
(小曽戸丈夫『意釈類経』第一冊P64 参照)
いつも言いますが、張景岳先生の考え方は、あらゆる部分で蓮風先生、北辰会の考え方にも大きな影響を与えていると思います。
・・・とまあこのように、大自然、大宇宙と、人間(小宇宙)を対比させ、その合同性、相似性を考えていった場合、人体における「左右」というのは、壮大な意味を持ちます。
そして具体的、臨床的には肝か、肺か、機能か、形態か、とね。
そして、『黄帝内経素問』陰陽応象大論(5)には、さらにこのような記載が出てきます。
「以右治左.以左治右.」
と。
これは、
「右の病は左で治しましょうね、左の病は右で治しましょうね。」
という意味です。
右に悪い反応が出ていたら、左を治療し、左に悪い反応が出ていたら、右で治療しましょうね、ということです。
〇
・・・んん?
これだけ、左右左右とうんちくを語ってきて、結局、最後は反対側で治療するのかよ!!
・・・そう思いませんか?(笑)
続く
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2011.07.21
初診時、問診をしていくと、何か強烈な精神的ストレスがあってから、今回の症状を発症したとか、もともと慢性的にあった症状が急激に悪化したとか、
患者さんがおっしゃる事がよくある。
こういう時、東洋医学では、「肝の臓」の異常を中心として起こっている病である、という風に推論することが圧倒的に多い。
・・・でもこれ、なんか、短絡的な感じがする。
(と、以前は思っていた。今にして思えば、自分の考えが浅かっただけだったが。)
ここで、「強烈な精神的ストレス」と一口に言っても、色々ある。
怒った、喜んで気が緩んだ、思い悩んだ、憂い悲しんだ、驚いた、恐れおののいた、など。
まず、東洋医学の古典(『黄帝内経』の『素問 陰陽応象大論(5)、五運行大論(67)』『霊枢 百病始生萹(66)』など)では、これらの感情それぞれの過剰によって、
影響を受ける臓腑が違う、ということが明確に述べられている。
怒りは肝、喜びは心、思いは脾、悲憂は肺、驚恐は腎、
という風に。
「七情」まとめ 参照
・・・ではなぜ、「精神的ストレスで発症、悪化した病」を、どれもこれも即「肝の臓の異常が中心」と考えることがあるのか、という問題。
感情別に、悪影響を受ける五臓が分かれているというのに。
これは結局、各感情の過不足によって、結果的、最終的に起こる現象が「気の動き方」の異常だからだ。
「気の動き方(方向性やスピード)」を指して東洋医学では「気機(きき)」という。
つまり、感情の過不足が起こると、五臓それぞれに悪影響を与えて、最終的には「気機」に異常が起こってくる、ということだ。
具体的に言うと、
怒れば気は上がり、喜べば気は緩み、思えば気は結ぼれ、悲しみ憂えば気は消え、驚き恐れれば気は下がる、
といった具合。
(『黄帝内経』「素問 挙痛論(39)、刺禁論(52)、繆刺論(63)」「霊枢 邪気蔵府病形(4)、百病始生(66)」など参照)
つまり、本来全身を滞りなくスムーズに周流するべき「気」が、上がったり下がったり、部分的に消えたり停滞したり、緩慢になったりと、
異常を起こし、結果的に気の流れがスムーズでなくなる、ということを述べている。
その時、気の流れをスムーズに是正するべく頑張る中心が、「肝の臓」なのであり、その肝の臓の働きが追い付かなくなってるから、
症状がとれない、という風に考えるのである。
だから、その細かい説明を端折って、
「精神的ストレスで悪化、発症する病=肝の臓の病変」
という風に考えることがあるワケだ。
・・・しかし、まだ問題は残る。
次回に続く。
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2010.04.25
清明院の患者さんは、何故か高学歴の患者さんが多いのですが、その中に、応用数理学をやっておられる方がおります。
(まあ、その方がやっておられる学問の世界なんていうのは、僕のようなズブの素人が見たら、まるで宇宙の言語のようでありますが・・。)
その患者さんと話していると、東洋医学に関する、非常に示唆に富んだ見解を得ることがあります。
(やっぱり患者さんは“先生”だね。)
この東洋医学というのは、何かと「数字」が出てきます。
「気一元の思想」の1、
「陰陽」の2、
「天地人三才思想」の3、
「東南西北」や「四神」や「四診」の4、
「五行」「五運」の5、
「六気」「六淫」の6、
「七死脈」「七竅」の7、
「奇経八脈」や「八風」や「八法」の8、
「九竅」「九宮」の9、
「十干」の10、
・・・などなど、挙げていけばキリがないほど、「数字」とその組み合わせのパターンで、自然界、および人体を考え尽くしています。
これって、単純に、なぜだろう・・・と、思いませんか?
まあ、古代中国人は農耕民族ですから、当然、
1.農作物の分配管理のための「計算」、
2.農地管理のための「測量」、
3.収穫時期を正確に知るための「天文学⇒暦法」
という3つの柱は、当然必要に迫られていたんであろうと思います。
この3つはそのまま、以下のように、数学の対象に置き換えられます。つまり・・
1.の「計算」は「量」と「構造」に、
2.の「測量」は「空間」に、
3.の「天文学⇒暦法」は「変化」に、
とね。
この様な考え方から、古代中国では自然発生的に
「現象を数字の変化に置き換えて、論理的に理解する」
という習慣がついていたんだと思います。
具体的に数学の話になると、やれ因数分解とか、展開公式とかっていう話になるけど、中国では「考え方」としては、数千年のはるか昔から、
生活に根付いていただろうし、詳しくはないが、実際に「算木(さんぼく)」という木を使った計算法もあったようです。
また、中国の数学は、西洋において数学が発展、発達する全然前から、かなり現代数学的にも正確な公式や定理が、ガンガン発表されていたようです。
現存する最も古いものとしては、『易』の洛書の魔方陣なんかが、興味深い例として有名ですね。
その他にも、円周率やらピタゴラスやら、大変高度な数学の問題を、西洋数学が証明する1000年以上も前から既に証明していたようです。
・・・ただですねー、やっぱりなんぼ美しく数学的、論理的に自然現象を切り分けてみたところで、実際の現実に起こる現象とは、若干の「ずれ」が生じることがありゃあしませんかねえ。
そうは言っても、一応は分けて考えなかったら、それはそれで難し過ぎますねえ・・・。(苦笑)
理解出来る人が限られ過ぎる、というかね・・・。
ここを克服(数理学を柔らかくする)する一番いい考え方として、先哲が考え出したのが、「気」であり、「陰陽論」であるのではないか、と思っています。
カテゴリ「陰陽」 参照
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2010.02.02
七情シリーズ、続いて「思」についてです。
人間は普通、何か行動する時、常にその前にそれを、
「しようと思って」、
行動する訳ですよね?
これが思慮「深い」行動だと、人様から高く評価されたり、思慮が「浅い」行動をして、争いごとの種になったりすること、ありますよね??
しかし、東洋医学では、思慮深かったら無条件にイイ!という訳ではなく、「思慮過度」と言って、思慮しすぎてもいけないし、思慮が不足し、
遂げられなくても、体に悪影響だ、と考えます。
(ここでもやっぱり、問題は”過不足”、”バランスの不調和”です。)
「思」という感情は、東洋医学では五臓の中の「脾」という臓に悪影響を与え、食欲不振やお腹が張る、といった、様々な症状を出します。
(これは西洋医学の脾臓=spleenとは違いますよ!僕はこれを何度でも言います!)
【参考】
『素問 陰陽応象大論(5)』「・・在志爲思.・・」
『同 五運行大論萹(67)』「・・其志爲思.・・」
・・・まあ、クヨクヨ思い悩んで、食欲不振や消化不良、こういう経験、思い当たる人も多いのでは?
ちなみに東洋医学の言う「脾」というのは、いわゆる現代医学の言う、「胃腸の働き」そのものを指して言うことが多いです。
さらに、東洋医学では、短期記憶や、血流そのものや、血の生成などにも大いに関与する、と考えます。
(ざっくり言うとね。)
また、「思えば気が結す」と言って、思い悩んだ状態が長く続くと、全身の血行が悪くなり、ひどければ出血傾向(不正出血、鼻血etc..)の原因にもなります。
(『黄帝内経素問 挙痛論(39)』「・・思則氣結.・・」)
また、飲食の不摂生などによって、先に「脾の臓」(胃腸の働き)が弱って、結果として精神的に思い患いやすくなる、という
「逆のパターン」
もあります。
(これけっこう大事!)
現代人は、食生活のメチャクチャな人があまりにも多い気がします。
(時間といい、食べてるモノといい、です。)
現代は、昔と違って、欲望のままに簡単に何でも食べるものが手に入る、まさに飽食の時代ですので、これが、あらゆる病の原因となっているケースは非常に多いと思います。
(しかも欧米型の、添加物、着色料満載の加工食品ばっかり!)
・・・気を付けたいものですね。(苦笑)
江戸時代中期、観相学(南北相法)で有名な水野南北(1760-1834)は、
「食は運命を左右する。」
と言って、節食こそが運気を好転させる秘訣だ、という意見を述べています。
彼がもし現代にいたら、現代人の食生活を見て、どういう感想を持つでしょうか・・・。(苦笑)
・・・次回は「悲」と「憂」についてです。
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2012.07.08
2016.05.09
2016.04.12
2016.04.28
2015.06.04
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2014.02.17
2014.04.26
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2024年10月の活動記録2024.11.01
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清明院15周年!!!2024.10.09
2024年9月の活動記録2024.10.01
2024年 10月の診療日時2024.09.19
2024年8月の活動記録2024.09.01
2024年 9月の診療日時2024.08.03
2024年7月の活動記録2024.08.01
2024年 8月の診療日時2024.07.10
患者さんの声(70代女性 目の痛み、不安感)2024.07.05
2024年6月の活動記録2024.07.01
2024年 7月の診療日時2024.06.05
2024年5月の活動記録2024.06.01
2024年 6月の診療日時2024.05.10
2024年4月の活動記録2024.05.01
2024年 5月の診療日時2024.04.13
(一社)北辰会、組織再編。2024.04.02
2024年3月の活動記録2024.04.01
2024年 4月の診療日時2024.03.14
2024年2月の活動記録2024.03.01
2024年 3月の診療日時2024.02.15
2.17(土)ドクターズプライムアカデミアで喋ります!2024.02.04
3.10(日)(公社)群馬県鍼灸師会で講演します!2024.02.03
3.3(日)「浅川ゼミ会」にて講演します!2024.02.02
2024年1月の活動記録2024.02.01
2.25(日)順天堂東医研、第5回特別公開シンポジウム「日本とインドの伝統医学」に登壇します!!2024.02.01
2024年 2月の診療日時2024.01.11
2023年、9月~年末の活動一覧2024.01.05
診療再開!!2024.01.01
2024年 1月の診療日時2023.12.30
2023年、鍼療納め!!2023.12.21
(一社)北辰会、冬季研修会のお知らせ2023.12.01
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患者さんの声(60代女性 背部、頚部の痒み、首肩凝り、高血圧、夜間尿)2023.11.25
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今週からの講演スケジュール2023.11.16
日本東方医学会学術大会、申し込み締め切り迫る!!2023.11.01
2023年 11月の診療日時2023.10.10
清明院14周年!!2023.10.04
12.3(日)市民公開講座やります!!2023.10.01
2023年 10月の診療日時2023.09.23
第41回、日本東方医学会学術大会のお知らせ2023.09.22
第55回、順天堂東医研に参加してきました!2023.09.21
第27回、日本病院総合診療医学会で発表してきました!!2023.09.20
Dr’s Prime Academiaで喋ってきました!2023.09.01
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第54回、順天堂東医研で喋ってきました!2023.08.17
順天堂東医研の学生さんと、「森のくすり塾」へ。2023.08.16
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