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前回のお話
◆「察証弁治」と「方証相対」
「弁証論治」と言えば、「証を弁えて、論理的に治療する」一連の過程を言い、それは、現代中医学の基本になっています。
その現代中医学は、今や世界の東洋医学教育のスタンダードになってきました。
(というか、なっています。)
1840年のアヘン戦争以降、1955年くらいまで、約百年かけて、それまでの長ーい歴史をよく踏まえつつ、「弁証論治」という考え方が中国国内で形成されていくときに、
日本の医学の影響はなかったかと言うと、僕は少なからず「あったのではないか」と思っています。
◆参考
中国では戦乱の度に重要な医学書が散逸するのに対し、日本には重要な医学文献がいい保存状態で多く残っており、幕末の日本の医学者たちの文献学が世界最高峰であったのは、
森立之しかり、渋江抽斎しかり、このブログで紹介した通りです。
もともと、「弁証論治」と似たような考え方で、日本にあったのが曲直瀬道三(1507-1594)の「察証弁治」という考え方です。
でもまあ、曲直瀬道三の師匠である田代三喜(1465-1544)の、そのさらに師匠は中国人と言われています。
(諸説あるようですが。。)
ツムラメディカルトゥデイ「漢方医人列伝 田代三喜」遠藤次郎 参照
要は、日本と中国は昔から、お互いに影響を与え合いながら、日本の医者も、中国の医者も、臨床現場、医学教育現場において、よりよいものを作ろうと工夫してきた歴史があります。
ところが、曲直瀬道三の「察証弁治」は、難解であったのか、あまり日本の医家には定着せず、その後登場する医学界の革命児、吉益東洞(1702-1773)あたりから始まる、
「古方派」という学派の「方証相対」という考え方の方が、一般的には定着していったような歴史があります。
漢方家でない私が語るのは僭越なんですが、この「方証相対」という考え方は、要するに
「〇〇湯で〇〇という症状が治せる」
あるいは
「〇〇という症状が揃えば〇〇湯が効く」
という考え方だそうで、悪く言えば短絡的であり、今日よく批判の対象として問題になる
「症状漢方、病名漢方、症状配穴、病名配穴」
の根本的な原因である、という批判もある考え方ですが、一方で、分かりやすい、現場で運用しやすい、ピタッとハマれば特大ホームラン!
という側面もあるようで、現場の医師に好まれた歴史があるのでしょう。
この「弁証論治派」と「方証相対派」の対立は、中国でも日本でも、未だに”一部では”続いていると言ってもいいと思います。
・・・うーん。
どうなんだろう。
仲良くやった方がいんじゃないすかね。。。(苦笑)
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