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これまでのお話
東洋医学は宗教か。 2 参照
さて、続きいきましょう。
◆東洋医学の論理に基づいて鍼しないと、自信が持てなかった。
僕は19歳で鍼を持ってからは、臨床能力では誰にも負けたくない、最強鍼灸師を目指そう、とか思って、ひたすら毎日、
治療に明け暮れました。(笑)
鍼灸学生の頃から、クラスメイトも友人も、友人の友人も、そのまた友人も、全て患者(というよりも献体)にしてしまいました。
(もちろんお金はとらずに、です。)
ほぼ毎日、夜中の二時三時まで、時には朝まで徹夜で、あーでもないこーでもないと考え、悩み苦しみながら、鍼をしました。
免許を取ってからは、少しだけお金ももらうようにし、結局その生活を、開業前まで、10年くらい続けました。
もちろん最初は、治らない患者とか、鍼したらかえって壊れる患者ばっかりでした。
それでも強引に頼み込んで、治療(献体)に来てもらいました。(笑)
誰よりも鍼が上手くなりたかったし、何故治らないのか、全症例、完璧に論理的に検証したかったからです。
そうでないと、何を反省したらいいのかすらわからないので、上達しない、と思ったからです。
その経験の中で、徐々に分かってきました。
鍼灸治療は、東洋医学の考え方でもって実践し、その結果を慎重に、緻密に検証しないと、何故その配穴や手法でおかしくなったのか、
理由が分からない、鍼灸した後に患者に起こる全現象を、術者が的確に理解することが出来ない、ということが分かってきました。
西洋医学的な考え方でも、治療らしきことは出来るのですが、術後に起こる、実に様々な患者の変化に対して、理論的に検証することが、
非常にしにくかったです。
(僕の場合は)
患者に起こった一つ一つの現象そのものを、西洋医学的にクリアに説明することは出来ても、それと、自分がやった鍼灸治療の具体的な関連はどうか、となると、
やれ自律神経がどうのとか、やれドーゼオーバーでどうのとか、全くザックリとした仮説しかなく、それでは具体的な反省が出来ないために、
同じようなミスを何度も繰り返しました。
確かに患者さんは、病態にしろ治療効果にしろ、一般社会にも広く普及している、西洋医学の言葉で説明すると、納得しやすいとは思います。
筋肉や骨や神経など、一般人でもある程度知っているような言葉で説明した方が、分かりやすい面はもちろんあります。
でも、それで効果が出なかったり、やっている本人自身が、自分が鍼灸をした後に起こる諸現象に対して、理解できていなかったら、意味ないし危ないです。
そこで、東洋医学独特の考え方である気や陰陽五行、臓腑経絡経穴学説に則って鍼灸治療を進めていくと、実に安定的に効果を上げながら経過を追うことができ、
ある症例に対して、何をすることがリスキーで、何をすることが安全策なのか、徐々に分かってきました。
プロとして医療をやる場合、起こった結果に対して、的確に医学的に理解し、対処することが出来る、これが非常に重要だと思います。
それが出来れば、もし失敗しても、具体的に何を反省し、次回に活かすべきかも、明確になります。
また、プロの鍼灸師としては、「鍼灸」という道具のもつポテンシャルを、最大限活かし切る努力をすることが重要だと思います。
こういう経験を繰り返す中で、
「あー、やっぱり鍼灸という治療道具は、東洋医学の考え方、古代中国の自然哲学の中から生まれた治療法であり、
それに則って使うべき治療道具なんだナー。」
ということが、毎日診る患者さん達の体に起こる現実、現象を通じて、分かってきたのです。
(僕の場合は)
また、患者さんへの説明だって、東洋医学の考え方や用語を、工夫して分かりやすい、かみ砕いた言葉に置き換えれば、素人にも分かりやすく、
上手に説明することは出来る、ということも分かってきました。
(ただ、これをサラッとやるには、それなりの勉強量や知能は必要ですが。)
まあ、どんなに理路整然と説明できたとしても、そこに効果、実効性が無ければ、価値は薄い。
また、どんなに効果、実効性があったとしても、それの説明がイマイチでは、価値は薄い。
ですので、プロの鍼灸師として、その両面を満たしつつ、鍼灸という道具の効果を自分なりに最大化し、しかも自分自身が健全に安定した状態で、
鍼灸臨床家生活を進めることが出来る方法論、学問として、かつて
「こんなもん無くなっちまえばいい」
とすら思っていた東洋医学を、消去法的に選択していった、というワケです。
続く
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