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これまでのお話・・・
補瀉 1 補瀉の定義と『黄帝内経素問』離合真邪論(27)の補法
補瀉 2 『黄帝内経素問』調経論(62)の補法
補瀉 3 『黄帝内経霊枢』終始萹(9)の補法
補瀉 4 『黄帝内経霊枢』官能萹(7)の補法
補瀉 5 『黄帝内経霊枢』邪客萹(71)の補法
補瀉 6 『黄帝内経霊枢』小鍼解篇(3)の補法
補瀉 7 『黄帝内経霊枢』邪気蔵府病形篇(4)の補法
補瀉 8 『黄帝内経素問』刺志論(53)の補法
補瀉 9 『黄帝内経霊枢』終始萹(9)の瀉法
補瀉 10 『黄帝内経霊枢』小鍼解萹(3)の瀉法
補瀉 11 『黄帝内経素問』八正神明論(26)の瀉法
補瀉 12 『黄帝内経素問』調経論(62)の瀉法
補瀉 13 『黄帝内経素問』刺志論(53)の瀉法
補瀉 14 『黄帝内経素問』離合真邪論(27)の瀉法
補瀉 15 『黄帝内経』の補法まとめ
補瀉 16 『黄帝内経』の瀉法まとめ
補瀉 17 『難経』71難における補瀉
補瀉 18 『難経』76難における補瀉
補瀉 19 『難経』76難における補瀉の続き
補瀉 20 『難経』78難における補瀉
補瀉 21 『難経』79難における補瀉
補瀉 22 『難経』における補瀉まとめ
補瀉 23 孫思邈(そんしばく 541~682)の『備急千金要方』『千金翼方』の補瀉
補瀉 24 金代、何若愚 撰『子午流注鍼経』における補瀉
補瀉 25 金代、竇漢卿『針経指南』における補瀉
補瀉 26 明代、楊継洲(1522-1620)『鍼灸大成』における補瀉
補瀉 27 明代、楊継洲(1522-1620)『鍼灸大成』における補瀉 その2
補瀉 28 明代、楊継洲(1522-1620)『鍼灸大成』における補瀉 その3 参照
では続きいきます!!
◆明代、李梃『医学入門』(1575)における補瀉
さて本日は『鍼灸大成』と同じ、明の時代の注目書籍、『医学入門』をみていきます。
この本を書いた李梃先生は、この本の中で、
「鍼をするのに、たくさん打っちゃダメです!少数鍼がいいんです!!」
という、我々少数鍼治療家にとっては非常に嬉しい発言をしてくれています。
ここでは面白いことに、呼吸を
「自然の呼吸(患者の自発的な呼吸)」
と、
「使然の呼吸(術者が患者を促して吸ったり吐いたりさせる呼吸)」
に分けており、
鍼を刺す時、抜く時は「使然の呼吸」を使い、
鍼を打った状態で、鍼を捻って気を集めたり散らしたりする時は「自然の呼吸」に合わせるといい、
と説きます。
「使然」と「自然」・・・、音が同じでややこしいけど、これはなかなか、興味深いことを言いますね。(*'ω'*)
これは単純に、刺針時、抜鍼時の刺激を軽減する方法、ともとれますが、自然の呼吸と使然の呼吸は、明らかに意味が違うように思います。
個人的には、心神、肺魄の操作じゃないかな、と思って、実際に使ってみたりしています。
またこの本では他にも、これまで書いてきたような呼吸の補瀉、男女の違い、深浅の補瀉についても述べています。
また、九六の補瀉と言って、九回雀啄(提挿)したら補法、六回雀啄したら瀉法といい、補瀉を強めるには九の倍数で雀啄の回数を増やし、
瀉法を強めるには六の倍数で雀啄の回数を増やすという、まるで宗教儀式や作法のような、かなり観念的とも思える補瀉法も紹介しています。(笑)
そして、各種の補瀉法を”迎隨”としてまとめ、”迎隨”が単なる補瀉の手法の一部ではなく、補瀉というものの総則であることを述べております。
『子午流注鍼経』といい、『医学入門』といい、”迎隨”という言葉の扱いを見るに、もしかしたら『難経 72難』は、
『黄帝内経』の”迎隨”の意味を具体化したようで、かえって矮小化してしまった面もあるのかもしれません。
まあともかく、『医学入門』でキッチリと強調されているのは、鍼下に気が集まった感覚がないと効かないよ、豆腐に刺したような手応えの無い感じではダメだよ、
ということを繰り返し述べています。
だから要は『医学入門』も、『鍼灸大成』と同じように、ただ教条的に補瀉手技を運用するのではなく、現場での術者の感覚に合わせて、
臨機応変に対応することを勧めているのです。
これが理解できないと、治療上まったく無意味な「お作法」に終始することになるでしょう。
続く
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