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今日から、東洋医学独特のいくつかの考え方について、簡単に述べてみようと思います。
まずは「虚実(きょじつ)」についてです。
古代中国の自然哲学では、何もかも全てのもの(森羅万象)を「気」から出来ていると考え、それを「陰陽」の二つに分けて考え、その運動で持ってすべての事象を説明する、という話は、以前にしました。
・・・東洋医学では、この考え方を当然、人体においても用いている訳ですが、「病気」というものを考えた場合、問題になるのは、
その陰陽のバランスがどう崩れているか、
どうすれば元通りに出来るか、
というところですよね?
そこで使う考え方が
「虚実(きょじつ)」や、
「寒熱(かんねつ)」や、
「表裏(ひょうり)」
という概念です。
このうち、まず「虚実」ですが、
「虚(きょ)」というのは、字のまんまですが、「うつろ」とか「足りない」ということを意味します。
「実(じつ)」はその反対で、「充実している」「過剰である」という意味があります。
この考え方から、何かが足らなくなった病気を
「虚証(きょしょう)の病」
と言い、何かが過剰になった病気を
「実証(じっしょう)の病」
と言います。
「虚証の病」であれば、病気を試合や戦に例えれば、防戦一方、という感じになりますし、「実証の病」であれば、バチバチの殴り合い、激しい交戦状態を示します。
そこからして、この”虚実”のことを「病勢」と呼んだりします。
そして、さらに細かく具体的に、「どこの」「何が」足らないのか、「どこの」「何が」過剰なのかを考えて、それがいち早くもとに戻るように考えて、戦略的に治療します。
因みに、邪気と戦う「正気(せいき)」が過剰(実)で、「邪気(じゃき)」が足らない状態(虚)なんであれば、それは健康体ということですから、治療対象にはなりません。(笑)
「病体」というのは、必ず正気が虚、あるいは邪気が実、またはその両方が混在している、という状態になっている、と考えます。
我々が普段行っている診察(四診:望聞問切)というのは、ここからさらに
「虚」の中心(根本原因)
や、
「実」の中心(根本原因)
を突きとめ、明らかにするために行います。
そしてそれを突きとめたならば、うつろなところが充実するよう、あるいは過剰な部分が散って落ち着く(平均化する)よう、鍼灸を施したり、漢方薬を飲んでいただいたりする訳ですね。
故に、「虚実」は、鍼をする上で、絶対に外せない考え方の一つなのであります。
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