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前回まで、
ⅰ.「表裏」
ⅱ.「寒熱」
ⅲ.「虚実」
という、3つのテーマについて書いてきました。
そして、東洋医学ではこれらの考え方を使って、患者さんの
「どこに(病位)」
「どういう(病性)」
病があり、
「その勢い(病勢)」
はどうなのかを、まず大まかに診断するんだよ、ということを述べました。
この考え方(診断方法)を、
「八綱弁証(はっこうべんしょう)」
と言い、これは東洋医学的な鍼灸治療をする上で、絶対にはずせない診断法(弁証法)の一つです。
歴史的には、清代の程国彭(ていこくほう)が1732年に撰した『医学心悟』の中の「寒熱虚実表裏陰陽辦」に説かれ、
その考えは1742年、呉謙の『医宗金鑑』にも引き継がれ、現代中医学の弁証法の基本の一つになりました。
なぜ「八綱」と言うのかというと、組み合わせとして、
「表か裏か」の2、
「寒か熱か」の2、
「虚か実か」の2
を掛け合わせると2の3乗となり、2x2x2=8パターンが得られます。
すなわち、全部は書かないけど、「表、寒、実」とか、「表、熱、実」・・・とかって組み合わせていくと、8通りの組み合わせが得られ、
それを「八綱(はっこう)」と呼び、大まかに病気を分類することが出来る訳です。
因みに、ここでしっかりと断っておきますが、上記は私の個人的な考えです。
中医学の教科書には、どの本にも八の要素を並列に並べて、陰陽、表裏、寒熱、虚実で八綱、という風に解説されていますが、個人的には上記の説に一票、という感じなんです。
(何の本で読んだか忘れたけど。。(^^;))
これは私の「八」に対する解釈にもかかわってきます。
奇経八脈の八、八法の八、八卦の八にしても、やはり総綱としての「二(陰陽)」があり、それの組み合わせや現れ方の違いのために他の「六」がある、
と考えた方が、個人的には納得できることが多いからです。
(まあ些末な話っちゃ話だけどね)
〇
患者さんの病気のパターンが、この8パターンのうちのどこに収まるか、ということは、我々にとってとても大事です。
なぜなら、これによって「治療の大まかな方向性」が決定づけられるからです。
病気というのは、患者さんが訴える、表面的な「症状」にのみとらわれて、治療や診断そのものが右往左往していては、なかなか治っていきません。
大事なのは、その症状を出さしめている本質は何か、要は病の本体は何なのか、ということを常に意識して治療を進めることなんです。
そうしないと、治るものも治らないんです。
これを中医学では「治病求本」といい、2500年前の東洋医学のバイブルである『黄帝内経素問』陰陽応象大論(5)に「・・治病必求於本.・・」とある通りです。
治療を技術論と考えると、本当に治療のうまい先生ほど、この「八綱弁証」が正確で、かつブレないんだと思います。
・・・ですから治療経過の中で、多少の症状の増減はあろうと、方向性が正しい訳だから、結果的には徐々に徐々に、確実に治っていく訳ですね。
ここが正確であれば、術者もフラフラすることなく、一貫性のある治療を進めることが出来るわけです。
まあ、ちょっとこのシリーズは難しかったかもしれないけど、とても大事な考え方なので、あえて書きました。
・・・ところで、清明院のHPにもこのブログにも、よく「弁証(べんしょう)」とか、「弁証論治(べんしょうろんち)」という言葉が出てきます。
コレ、聞き慣れませんよね?次回はそのお話。
〇
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