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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5
「四逆散」というお薬 6
「四逆散」というお薬 7
「四逆散」というお薬 8 参照
では続きいきます!
さて、本日はまた違う先生の見解を考えてみましょう。
本日はちょっと古い時代に戻って、宇津木昆台(1779-1848)先生です。
江戸後期を生きた、カミソリのようにキレる、素晴らしい頭脳を持った先生、という印象なんですが、長くなりそうなんで、この先生については、あとでちゃんと紹介します。
〇
ともかく、宇津木先生の著書『古訓医伝』には、
「四逆散は、大柴胡湯の証の虚しているものである。」
と述べられており、その意味として、
「大柴胡湯は少陽病の実証で胃の気も実のもの、四逆散は少陽病の実証で、胃中に力が無くて、水邪が”胃の外”にあるもの。」
と述べ、
「そう考えれば当たらずとも遠からずだよん。」
と述べ、それをもとにさらに深く考えると、
「”左の”横腹、胸や脇に緊張が現れ、胃中は力が無い。気血水が滞って結胸のような感じで、場合によっては陰嚢や、腰の方にまで緊張が及び、縮こまってしまうものだ。」
と述べ、「左の腹」を強調し、四逆散が気血水の滞りであることを強調し、乾姜や附子などで陽気を補うことは不要である場合の処方だと強調しています。そして、
「これは血の滞りがメインであって、その周りに水がくっついたものである。」
と、これまた意味深いことを仰っております。
(・・・まあ、この言い方で、この処方における枳実の効果を説明しています。)
また、この先生の「左右」に対する考え方も、興味深いところです。
「四逆散」というお薬 8 で紹介した藤平先生は、四逆散の場合のお腹には
”左右差はない”
と強調していましたので、全く違う見解ですね。
竹下個人的には、陽気が伸びないんだから左に出てるはずだ、とか、四逆散だから左右差はないはず、とか、あまりそういう決めつけた診方、考え方に拘って人体を診るのは、
以前からですが、良くないんじゃないかな、と思っています。
こういうのは、鍼灸の場合特にあるんです。
右の経穴に出てるはず、左の経穴に出てるはず、ってやつね。
臨床上は、こういう「先入観」が非常に邪魔になる場合があるんです。
こういうのは、あくまでも結果から、帰納法的に推論するべきであって、演繹的に考えすぎるのはよくないと思いますね。
「演繹(えんえき)」と「帰納(きのう)」 参照
まあちょっとこれは、もちろんしっかりと基本を押さえた上での話にはなるけど。
この場合には左に出てる筈、とか、そういう考え方の根拠は陰陽論なんだけど、陰陽論だからこそ、やはり機械的に運用するべきではない。
「四逆散」というお薬 10 に続く
〇
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