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これまでのお話・・・
「左肝右肺」に関して
「左肝右肺」に関して 2
「左肝右肺」に関して 3
「左肝右肺」に関して 4
「左肝右肺」に関して 5
「左肝右肺」に関して 6 参照
では続きいきます。
というか、キリがないので、いったん終わりましょう。(笑)
◆左右の使い分け
東洋医学に、「巨刺(こし)」とか「繆刺(びゅうし)」という治療方法があります。
これは、患部とは左右反対側を治療したり、患部と離れたところを治療したりする方法なんですが、問題は、
”これらを「どういう時に」使うのか”
です。
毎回毎回、必ずそうすれば正解、ではないのです。
まあ、これは業界的には半分以上常識なんで、いちいち出典挙げないけど、各古典によれば、
巨刺の方は経脈に病があるときで、しかも九候の脈に変化があるときで、繆刺と比べて相対的に深刺しをしろ
とあり、
繆刺の方は絡脈に病があるときなので、巨刺よりも相対的に浅刺しであるが、場合によっては刺絡しろ
と、あります。
・・・このようにあるんですが、古典におけるこの書き方に、僕的にはもう一つ納得できません。(笑)
だって、これだけだと、経脈に病があったって、絡脈に病があったって、それを患部の「反対側に」取る理由になってない。
おそらく、古代中国のえらーい先生が書いた、その部分の解説を読んでも、申し訳ないが、解説になってなくね?って話です。(笑)
右の絡脈に病があるなら、そのまま右の絡脈を治療すりゃあいいし、左の経脈に病があるなら、そのまま左の経脈を治療すりゃあよくね??、と思ってしまいます。(笑)
では何故、反対側を取った方がいいかというと、ここはあくまでも僕の私見ですが、内臓の位置をみれば分かるように、左右が全く対称な人間なんていない訳ですが、
健康人であればおおむね左右の平衡バランスは取れています。
ということは、人間にはそもそも気血の左右差を是正しようという力が備わっています。
それにより、全身くまなく、過不足なく、気血が行き渡り、健康が担保されるから、ですよね。
ですので、当然ながら、例えば左の経脈や絡脈が、何らかの病的な状態になると、右の経脈や絡脈にも気血の変動が起こるはずです。
で、普通であれば、直接、病的な状態になった経脈や絡脈をいじるのが常套手段でしょう。
左なら左を、右なら右を、と。
邪気を散らしてみたり、正気を集めてみたりね。
ところが、この常套手段よりも、病経の「反対側を」狙った方がいい場合というのは、患側(病的な経脈や絡脈)の反対側の経絡が、患側の経絡の異常を是正する「主体」になっている場合ではないでしょうか。
(ぼくはそうだと思っています。)
因みに、『黄帝内経』にも、左右差を調整することの重要性は諸篇に説かれています。
(素問では陰陽応象大論(5)離合真邪篇(27)繆刺論(63)、霊枢では官鍼篇(7)官能篇(73)あたりでしょう。)
日本でも、かつてわが地元である群馬におられた鍼灸師である赤羽幸兵衛(1895-1983)先生が、「シーソー現象」と称して、左右のバランスを調えることの重要性を説いておられます。
いずれにせよ、
「ではどういう時に、左右反対側を取った方が良いのか」
という診断学が重要であるわけです。
僕はそれは、「気の偏在度合い」で判断するようにしています。
(メディカルユーコン『鍼灸治療 上下左右前後の法則』 参照)
つまり、病的な状態になったのは左の経脈や絡脈だったとしても、全体として右に正気や邪気が偏在していれば、そっちを動かした方がより早く、
そして動きが大きい、と考えていますし、日々そう実感しています。
・・・とまあ、そんな風に考えて、細かいメカニズムにも注意しつつ、臨床では常に臨機応変に左右を選んでおります。
(因みにこの場合、”脈診”は非常にポイントになるように思います。)
なんか話がそれたけど、このシリーズ、とりあえずおしまい。
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