東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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「虚里の動(こりのどう)」について

2013.05.28

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こないだ、奈良の藤本漢祥院に研修にうかがった際、蓮風先生から、

「高津敬節(こうづけいせつ)の『鍼灸溯洄集(しんきゅうそかいしゅう)』を調べておきなさい。”虚里の動”について、重要なことが書いてある。」

と言われました。

 

 

たまにそういうアドバイスをいただくことがあります。

 

 

で、そういう時って、後々、それが何か重要な意味を持ったことが、これまでに何回もあります。


・・・で、さっそく調べました。


まず、『鍼灸溯洄集』という本は、江戸時代初期の1694年、浮世絵、俳諧、浄瑠璃など、日本独特の華やかな文化が花開いた元禄時代初期、

元禄8年に、高津敬節という人物によって刊行されました。


この高津敬節という人物は、大阪で3代続いた漢方医の一家であり、鍼灸についても一家言持っていた人物だと言われております。


この本の序の部分には、

「俗説に流されていた当時の鍼灸界をに対して、その原点を溯洄(そかい・・・流れをさかのぼる)する、という意味でこのタイトルになった。」

と書かれております。


東洋医学の原点と言ったら、『黄帝内経(こうていだいけい)素問、霊枢(そもん、れいすう)』です。


大阪の高津さんの、ごちゃごちゃ言う人に惑わされるな、原点に立ち帰れ!という主張です。


まあそうやって、その人自身がごちゃごちゃ言う訳ですが。。。(笑)


結局江戸時代も、今と同じか。。。(苦笑)


問題なのは、高津先生のような意識の高さを、医者たち自身がなかなか持てないことなんでしょうね。。。





・・・で、「虚里の動」に関してですが、これは『素問 平人気象論』にある通り、左の乳下に、服の上から触れても分かるような脈の拍動があった場合は、

気が異常に漏れていることを示しており、アブナイよ、というものです。


この、「左の乳下(乳頭のやや下)」という位置を、「虚里(こり)」と呼び、ここを別名「胃の大絡(たいらく)」と言って、胃の腑の働きも含めた「胃の気」との関係が深い、

 

と考えております。


「胃の気」というのは「胃の腑」や「脾の臓」の働きも含めた、もっと大きな力、いわば生命力そのもののことを指します。

カテゴリ 「脾・胃」 参照


東洋医学では、この「胃の気」、つまり生命力そのものが危うくなってくると、場合によっては胃の大絡である虚里から気が漏れてきて、

「虚里の動」となり、非常に危険な兆候だと考えるワケです。


・・・で、その問題に関して、『鍼灸溯洄集』に、どう書いてあるか。


これは、「虚里の動」をさらに細かく分類し、検討を加え、虚里の動が出てるのに死なない場合はこういう意味がある、とか、この場合は治しにくい、

 

とか、この場合はまだ見込みがある、とか、古典からの口伝をひいて、細かく分類、説明してくれております。


つまり、

『黄帝内経』の言説を、教条主義的にとらえるのではなく、実際の臨床と照らし合わせて、その後の医家の言説も踏まえて、批判的に読んでいる、

ということです。


また、ここの記載は

虚里の動で「胃の気」をうかがう、という問題についても、程度問題やパターンがある、

ということを示唆しております。


すげえぜ、高津先生。


僕も頑張ります。


まーこのように、僕にとっては蓮風先生の言葉は、簡明で、いつも示唆的です。


いい勉強させてもらいました。(感謝)



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