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東洋医学と中医学

2010.03.18

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最近は、メディアに東洋医学が取り上げられることも増えてきましたね。

 


コレはとてもいいことだと思います。

 


それで、ちょいちょい耳にすることもあるんじゃないかと思いますが、「東洋医学」という言葉と、「中医学」という言葉があります。

 


今日は、

「この2者の違いはなぁに?」

という話でもしようかな~、と思います。

 


よく世間で「東洋医学」と言われているものっていうのは、


古代中国に端を発し、

「気」や「陰陽五行」という哲学をもって自然や人体を認識し、

それを基本とし、病の仕組みや治療方法を考え、

数千年にわたって結果を出し続け、患者から支持され続けている、

伝統的な医学


を指して言います。

 

 

「中国伝統医学」なんていう言い方をするときも、上記のような意味合いが強いと思います。



それに対して「中医学」というのは、


新中国(中華人民共和国)が、上記の考え方を踏襲しつつも、それまでの自国の伝統医学を、
「唯物論(ゆいぶつろん)」でもって、国を挙げて”いったん”論理的、体系的にまとめあげた医学

 

と言えるのではないかと思います。


(ちなみに、この中医学が、果たして本当に論理性が高いか、論理的か、という問題については議論がありますが、それについてはここでは触れません。)

 

 

因みに「中医学」は、先ほど言う「中国伝統医学」と区別するために、あえて「”現代”中医学」と言われることもあります。

 



・・・しかしこの、「唯物論」という発想は、自然界の全ては「物質」で構成されており、「物質」間に働く物理法則でもって理解可能、というのが基本スタンスですから、

 

この考え方の中にあっては、東洋医学のいう「気」というものも、

「気とは物質である」

ということになり、確かに理解しやすい部分がある半面、深く勉強していくと、色々な不具合、納得しにくい部分が生じてしまいます。

 

(少なくとも私はそう思います。)

 


要は、

 

「気」は現代物理学のいう、質量を持った「物質」とは、言い切れないのではないか?

 

ということです。

 


また、東洋医学のいう「陰陽五行」という認識方法、法則も、必ずしも物理現象の解釈、という範疇のみに用いるものでもありません。

 


新中国(中華人民共和国)は、主に1950年代に、現代まで続く「中医学」の国定教科書の第一作目を作成していった訳ですが、この「まとめる」という過程では、

 

当然、「そぎ落とす(端折る)」という作業をしなくてはなりませんので、まとめ上げられた完成品は当然、分かり易いし教育に使い易い反面、

 

東洋医学の悠久の歴史が持つ、全ての情報を網羅したものには当然なりえません。

 

 

「唯物論」の基軸からして、”例外”や”矛盾”や”説明しにくい因子”は、一定程度排除される訳です。

 



・・・こないだ、患者さん(とある科学者さん)と話していたのですが、どんな優れた論文でも、「まとめる」時には必ず、それを書いた人の「美学=美意識」が入り込んでしまうそうです。

 

(そりゃそうだわね)

 


なおかつ、その論文を評価する側、採用する側の「美意識」も、その論文がいかほど世の中に許容されるか、という意味では、大きく関与してくるそうです。

 



・・・ですので、当然、まとめられた当時(1950年代)の時代背景の影響や、編纂者のリーダーの美意識の影響なんかを多分に受けて、一貫した考え方(この場合は唯物論)、

 

美意識でもって、「東洋医学」を現代風にまとめ直したものが、いわゆる「中医学」だ、ということになります。

 

 


「唯物論」でもってまとめたたことの是非論についてはともかく、僕から見れば、少なくともこれをやったということには、大変意義があると思います。

 



僕自身、「中医学」というものがあったから、東洋医学を勉強する気になった、と言っても過言ではありません。

 

 


鍼灸の学生時代に、鍼の世界というのはオカルトや迷信や単なる神秘じゃなくて、れっきとした医学なんだ!と思えたのも、「中医学」というものの、

 

ある種の論理性に出会ったお蔭だと思っています。

 

 


そうして、知識を少しずつ深めていった後に、中医学の考え方だけでは説明がつかない部分や、また、日本の歴代(特に江戸期)の医者達の、面白い見解や独創なんかに出会っていく訳ですね。

 



・・・ちなみに「中医学」が中国独自の伝統医学だとすれば、韓国にも、それとよく似た「韓医学(かんいがく)」というものがあります。

 

 


両国ともに、西洋医師とは別に、それぞれに自国の伝統医学を修め、実践する専門資格である、「中医師」、「韓医師」という国家資格を設け、

 

大学教育、インターン含め10年ほどかかって取得させ、現在、両国の国民の健康に大いに寄与しています。

 



・・・となると、あれ? 日本はどうなの??

 

 


「日医学」は?

 

 


「日医師」は?(苦笑)

 

 


日本の明治維新以来の西洋化、富国強兵、産業立国という方向性が、医療制度において、思わぬところで周辺2国との「差」を生んだようですネ。


(あえて「違い」と言わずに「差」と言わせてもらいます。)

 

 


まあ今日のブログは、患者さんはあんまり興味ないかも知んないけど、日本の東洋医学の現状が少しは分かるんじゃないかな、と思って書いてみました。

 

 

医学、医療というのは、庶民の幸福な暮らしと直結するものであり、その時その時の時代の背景にある支配的な思想や哲学の影響をモロに受ける、ということです。





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