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これまでのお話し
『列子』という人物 参照
さて、続きいきましょう!!
◆「太極療法」なるもの。
鍼灸治療において「太極」という言葉を盛んに用いた近代の鍼灸家では、なんといっても澤田健先生がおります。
澤田健という人物 参照
澤田先生は、自身の治療を「太極療法」と称しました。
この先生自身の著作はほぼないのですが、高弟である代田文誌先生が治療院見学研修中に聞いた、澤田先生の発言をまとめて書いた「聞き書き書」である『鍼灸真髄』は、
鍼灸界のベストセラー、かつロングセラーと言っていいでしょう。
↑↑真面目そうな代田先生。
この本の中に、澤田健先生がなぜ自分の治療のことを「太極療法」と呼んでいるかが、代田文誌先生の言葉で書いてあります。
「要するに先生の治療は、五臓六腑の中枢を治すことにより末梢をも治す、局所治療ではなく、根本治療である。末梢的、小局的な治療に対して、自身の治療を太極療法という。」
「末梢の治療にばかり気を取られて中枢の根源を忘れた西洋医学は小乗の法であり、根本治療は大乗の法。大乗法華経の一年三千十二因縁の理による太極療法だと言われる。」
(以上『鍼灸真髄』P19)
澤田先生は若い時分から日蓮宗に傾倒し、晩年は時代背景もあったのか、神道、国粋主義に傾倒したことが知られていますが、その発言には仏教の知識が豊富にあることをうかがわせるものが多いです。
また、
「複雑多岐多端になって帰一するところを失った観のある現代西洋医学に対して、それを簡約し、万古不易の治療原則を教えるものである。」
とも説明し、また、澤田先生自身の発言として、
「昔から治療には小局治療と太極治療とがあって、太極治療は一流でないと出来なかったものだ。」
「東洋には名の付く病気などというものはないのだ。病気というのは血の循環が不平均になったということなのであって、それに名を付けるだけでいい気になっているなんて、実にばかげた次第です。」
という発言を紹介しています。
(同書P30より)
このように、過激な発言が多いのも、澤田先生の魅力の一つだと思います。
(それが原因で叩かれたりもしていますが。(苦笑))
しかし、臨床の場での実際の澤田先生は、こういう辛辣な物言いもするけど、時には冗談も飛ばし、豪快に爆笑しながら診療を行うような、
明るい先生であったようです。
(なんか、誰かと似ているような。。。)
また、澤田健先生のもう一人の高弟である山田国弼(くにすけ)先生の『鍼灸沢田流―原理から実際―』では、「太極」の語源である『易経』をはじめとする中国の古典の内容にも触れつつ、
また、西洋医学の考え方にも十分に触れつつ、「太極療法」の意義の説明と理論化を試みています。
↑↑あまり知られていませんが、この人の著作は非常に精緻で、大変な勉強家であったことが分かります。
この本は入手困難本なんですが、是非入手して読んでもらいたい本ですね。
・・・とにかく、澤田先生が意識した「太極療法」というのは、どこそこの経穴に鍼灸するとか、どこそこの部位に着眼するとか、そういう意味ではなく、
古典の教える鍼灸治療法を通じて、結果的に
「血液循環の不平均を正す、それによって自然の良能(治る力)を引き出す」
ことが、より人体にとって根源的な「太極」治療なのである(西洋医学へのアンチテーゼとしての意味も込めて)、という立場なんですね。
澤田先生がこれを述べ、実践しておられたのが、今から約100年前の昭和初期ですが、基本的には今でも通用する考え方であり、現在、世界が中国伝統医学に注目しているのも、
中国伝統医学が、近代西洋医学にはない、こういった考え方でもって治療を実践し、結果を出すことが出来ているからでしょう。
続く
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