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これまでのお話し
さて、続きいきましょう!!
◆「気」の哲学の変遷
さてここまで、「太極」「無極」「その両者の関係」「鍼灸臨床家としてはどうか」あたりを題材として話を進めてきました。
「臨床家としてはどうか」というところで、北辰会ではこの医学の言う「陰陽論」を、単に「陰陽論」と呼ぶのではなく「”太極”陰陽論」として、
理解、運用するべきだ、というお話(臨床古典学)もしました。
蓮風先生の御著書では、中国、成都中医薬大学の教授で、易学の大家である鄒学熹先生の『易学十講』の論を参考に、陰陽論というのは「陰」と「陽」と「その境界線」の3つ、
「三を含みて一となす」という考えがあり、全て一つであるという太極と、陰陽と境界の太極があるからだ、と説きます。
(因みにこの辺の詳細(『易学十講』の部分的翻訳)は、北辰会機関誌『ほくと』17号に掲載されています。)
まあこれは、簡単に言えば何かを陰陽に分ける時に、その基準(境界)を明確に!というお話です。
そしてこれには、背景として「気一元論」という考え方があります。
「気一元論」を含む記事 参照
「気一元論」は、簡単に言えば「この世界は全て気で出来ているのさ」という考え方です。
東京大学出版会『気の思想』によれば、「気一元論」という言い方は、特に誰それさんが言い出した言葉、というワケではないようで、古くは『老子』『荘子』『淮南子』の中にもあるっちゃある考え方であり、
この考え方を強調したのは、中国では北宋の張横渠(ちょうおうきょ 張載(ちょうさい)ともいう 1020-1077)、日本では伊藤仁斎(1627-1705)が有名だそうです。
伊藤仁斎という人物 参照
(張横渠もせっかくなんでそのうち紹介しましょう。この人は何とあの程顥と程頤(二程子)の叔父さんです。優秀な一族だねえ~~ (゜レ゜))
荘子の
・・・因みに、現代中国では大きく気の哲学について3つの流れがあると考えているそうで、
1.程伊川と朱子の「性即理」の考え方(客観唯心論、客観的観念論)
2.陸象山と王陽明の「心即理」の考え方(主観唯心論、主観的観念論)
3.張横渠と王夫之の「気」の哲学(唯物論)
とし、3.の唯物論哲学こそ最高のものである、としているそうです。
(by 『朱子学と陽明学』島田虔次)
(因みに、王夫之の気一元論に関してはこの論文が参考になりました。)
しかしこの、3.の、気一元論を、全くの唯物論と解し、それを最高のものとする考え方と、北辰会の考え方は違います。
中国哲学、中国伝統医学に通底する「気」という概念は、唯物論でとらえきれるものではない、と考えています。
北辰会では「気」を唯物論でとらえ、最小精微な物質である、とするのではなく、むしろ生命原理、生命原体ともいうべきものとして、生気論的に理解しています。
つまり「気」を、物理学(ニュートン力学)の言うような質量を持った存在、と考えるのであれば、それとは認識を異にする、ということです。
(といって、量子力学の言うような素粒子とも同じでないと思いますが。)
・・・ま、「気ってなに??」という問いに対しては、トートロジー的になるけど、10年前に書いたように、「気は気です。」という答えがやっぱベストかな、と。
ここまでの話で言えば、生成論の太極も、場の論の太極も、認識論、存在論における主観と客観も、ぜーんぶただ一つの気の動きの一様態ですよ、ってことですね。
次回、清代に「気は動きである」この理論を完成させたと言われる戴震(1723-1778)さんを紹介します。
続く。
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