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昨日、「牛車腎気丸」という薬という記事を書きました。
その時に、もう一種類、「治打撲一方」という薬の話にもなりました。
これはどうか。
これは実は、以前紹介した江戸期の医家、香川修庵先生(1683-1755)の創方だそうです。
墓マイラー 9 参照
ですが、真柳誠先生の研究によれば、「治打撲一方」という”名前で”文献に登場するのは、あの幕末から明治の漢方医、浅田宗伯先生(1815-1894)の
『勿誤薬室方函口訣(ふつごやくしつほうかんくけつ)』だそうで、ということは、この薬の名付け親は浅田宗伯になるそうです。
・・・まあ、個人的にはどっちでもいいんですが。(゚∀゚)
この薬の中に含まれる川骨(せんこつ)、樸樕(ぼくそく)という、活血化瘀の効果を持つ生薬は、呼び名からして日本独特であり、中国の処方に含まれることはないそうで、
そういう意味でもまさに日本製の漢方薬だそうです。
(もともとは戦国時代に傷や怪我を治療する秘伝の薬だったのを、香川先生がまとめたんだとか。)
(中国では川骨のことは萍蓬(ヘイホウ、コウホネ、カワホネ)というらしいが、『中医臨床のための中薬学』には載っていませんでした。。)
「治打撲一方」は、昭和になって、一貫堂の山本巌先生が紹介したことで、よく使われるようになった経緯があるそうです。
(今ではツムラのエキス剤になっています。)
これは中医学では血の流れを調える「理血剤」のグループであり、その中でも停滞した瘀血を取る「活血祛瘀剤」のグループで、その名の通り、
打撲や捻挫を治療する薬なんですが、応用的に骨折の後遺症などにも使われるようです。
さらに応用的には、経絡経筋が冷えて、瘀血が停滞した痛みなんかにも使われるそうです。
・・・ということは、外傷はともかくとして、気滞血瘀や瘀血性の疼痛に応用するには、
「経絡経筋に冷えがあり、気が停滞し、血も停滞している」
ということが診断できないとマズい、ということになります。
また、これを適切に運用するには、同じグループの有名な薬であり、現代でもよく使われる
「桃核承気湯」「血府逐瘀湯」「桂枝茯苓丸」「大黄䗪蟲丸」「温経湯」「抵当湯」
なんかとの使い分けができる能力が要求されるはずです。
まあ、治打撲一方に限って言えば、熱邪や湿邪の関与する痛みだったり、気虚や陽虚が関与するものに使ったらドボン、ということでしょうか。
漢方薬というのは、もちろんながら、東洋医学の生命観、疾病観に立脚して考案されたものです。
ここを無視して使用されているような現実があることは、実に残念に感じます。
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