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こないだ、とあるドクターと話していて、「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」という有名な漢方薬の話になった。
慢性腰痛や耳鳴りの患者さんなんかで、これを処方されている患者さんを、たまに見かける。
効果のほどを問うと、多くの患者さんは
「・・・うーん、うん。。。」
て感じの回答が多い。(苦笑)
・・・何で、こんなことになってしまっているのか。
少し考えてみたいと思います。
この薬の出典は、南宋の医家である厳用和(げんようわ)先生が1253年に書いた『済生方』です。
『済生方』は、厳用和先生の30年以上の臨床経験と学問に基づいて、それまで無数にあり過ぎて、ある意味で医家を混乱させていた、数万もの方剤群を、
500程度にスッキリとまとめて下さった、ありがたい本で、中国はもちろん、日本でも珍重され、現代にまで伝わっている書だそうです。
牛車腎気丸以外にも、現代のうつ病などによく使われる帰脾湯や加味帰脾湯など、『済生方』の処方は現代でも応用され続けています。
牛車腎気丸は、陽気を補い温める作用を持つ「補陽剤」のグループで、あの『金匱要略』に出てくる八味地黄丸の中の桂枝を肉桂に変更し、
さらに牛膝と車前子を加えたものであり、八味地黄丸からさらに、腎を補う作用と、水を捌く力を強めてあるもの、と言えますね。
ということは、「腎陽虚>下焦の水湿邪」、という診断がついてないのに、使ったらマズい、ということになる。
腎陽虚とは言っても、八味地黄丸と、牛車腎気丸と、中国明代、張景岳の右帰飲、右帰丸あたり、ここを四診(望聞問切)から判断した上で、
適切に使い分けているドクターが、どれくらいいるだろうか・・・。
ネット上を少し見ただけでも、牛車腎気丸のエビデンスレポートはいくつもあるようだが、東洋医学の発想で創方された薬を出すなら、東洋医学的な診断に基づいて、
しかも一定期間はそれのみで、使って頂きたいと思うのは僕だけなんだろうか。。。
西洋医学的な病名に基づき、他の西洋薬とともに漢方薬を出す、これでは何が何だか、じゃないでしょうか・・・?
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