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こないだ、患者さんで、「四君子湯」という漢方薬を処方されている方がいらっしゃった。
・・・そこでふと、昔のことを思い出した。
ずいぶん前のことだが(15年以上前かな?)、蓮風先生が実技デモで腹診をしながら、
「これは四君子湯の証や!四君子湯と六君子湯は違うぞ!!どう違うか、お前分かるか!?」
と、当時の講師の先生が指されて、その先生が答えられずにアワアワしていたのを思い出した。
そのあと確か、太白に鍼をなさっていたように思う。
・・・で、当時、帰ってから、四君子湯と六君子湯の違いについて一生懸命調べたことがあった。
久々に思い出したんで、ここに書いておく。
〇
四君子湯の出典は中国宋代の国定処方集である『和剤局方(1110)』で、この方剤は『中医臨床のための方剤学』では「補気剤」のグループの薬だ。
(「補気剤」の代表選手、といってもいい方剤みたいです。)
内容は人参6g、白朮9g、茯苓9g、炙甘草6gとのこと。
(本によって別説もあるようだが。。)
効能は益気健脾、主治は脾気虚とある。
人参と炙甘草で津液を補い、白朮、茯苓では湿邪を取る、この相反する作用をもって、全体としては脾の臓の弱りをフォローする薬、というワケだ。
(相反する作用を持つ生薬をあえて配合して、結果的に効果を高める、これを相反相成というそうです。)
それに対して、六君子湯はどうか。
出典は明代の虞摶(ぐたん 1468-1517)による『医学正伝(1515)』だそうで、四君子湯よりもずいぶん後になって考案された処方らしいですが、
これも分類的には「補気剤」のグループで、四君子湯の脾気虚がさらに進んで、脾胃ともに気虚(脾胃気虚)を起こし、さらに湿痰を生じているものに対する方剤で、
前述の四君子湯の4味に加えて、和胃降逆の作用を持つ小半夏湯の内容(半夏・生姜)を加え、さらに理気健脾、燥湿化痰の陳皮と、補脾、養営の大棗を加え、
全部で8味もの、やや複雑な構成になっている。
総じて効能は補気健脾、和胃降逆、理気化痰、主治は脾胃気虚と痰湿、ということになる。
清代の名医で有名な程国彭(ていこくほう 1662-1735)の『医学心悟(1732)』に、
「・・・気虚挟痰、清陽不昇、濁陰不降、即上重下軽、六君子湯主之。・・・」
と、簡潔に述べているように、臨床的には脾胃の弱りによって中焦から上昇(特に上焦)に痰湿が停滞しているものに使うとある。
四君子湯も六君子湯も、どちらも脾気虚を補うという点では同じだが、六君子湯の場合は胃の気虚と痰湿の邪実が射程に入っている、ということですね。
鍼では、四君子湯の場合は大白への補法でいいと思うが、六君子湯の場合は、大白だけで終われるのは相当腕達者だと思う。
二穴に分けるか、腹を使うか・・・。
いずれにせよ、所見も評価も、全然異なる。
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